2024年5月場所個別評価 遠藤

 今場所は西十両2枚目であり、8年ぶりの十両での土俵となったが12勝3敗の好成績だった。ストレートで勝ち越しを決め、連勝を10まで伸ばした。しかし11日目は若隆景に肩透かしで敗れ、初黒星となった。また優勝争いでも若隆景と新十両の阿武剋に並ばれた。そして13日目の阿武剋戦は突っ張り合いから得意の左四つに組んだ。しかしなかなか攻めきれず、最後は右上手出し投げを打った瞬間、阿武剋が圧力を掛けて浴びせ倒した。これで2敗となり、若隆景と阿武剋は1敗を守ったので優勝争いから後退した。千秋楽は紫雷に敗れ、12勝で場所を終えた。

 内容に関しては立ち合いで動く相撲もあり、ベテランには失礼だが自信を持って相撲を取っていたようには見えなかった。しかし土俵際の粘りと技は健在であり、技能相撲に観客から大きな拍手が起こっていた。3日目の朝紅龍戦は押して前に出たところを朝紅龍に土俵際で右にいなされ、ほぼ同時に土俵を割った。軍配は朝紅龍に上がったが物言いが付き、結局行司差し違いで遠藤の勝ちとなった。遠藤は土俵を割る際に軽くジャンプしており、その分だけ外に出るのを遅らせた。まさにベテランの妙技である。それと同時に行司泣かせの一番でもあった。8日目の時疾風戦は当たってすぐに右上手を許し、寄り詰められたものの左下手投げを打ち、差し手を抜いてクルっと回り、相手を這わせた。勝ち越し決定ということもあり、館内からは大歓声が上がっていた。9日目の獅司戦は立ち合いで左に変わり、突き立てられるも突き返し、左四つ右上手の体勢を作った。しかし獅司に肩越しに右上手を取られており、万全の体勢とはいえなかった。すると左下手を離して獅司の右上手を切った。そして獅司が前に出てきたところを体を右に開き、上手出し投げで仕留めた。当然だが取組後の声援と拍手が凄かった。技で魅了しており、この日に来たお客様は遠藤の相撲を観ただけで満足という人もいたのではないだろうか。それくらい素晴らしい内容だった。優勝はできなかったものの、持ち味は十分発揮できたと言っていいと思う。

 7月場所は再入幕が確実となったが、今場所の勢いをそのままに勝ち越したい。また一場所での幕内復帰は嬉しい限りである。若手力士の台頭が著しいが、幕内力士としてまだまだ存在感を発揮して欲しいところだ。