2024年5月場所個別評価 琴櫻

 琴ノ若改め琴櫻は今場所は11勝4敗という成績だった。初日は大栄翔に敗れ、6日目は大の里に負けたが前半戦は6勝2敗で折り返した。2敗ということで優勝争いの輪の中に入っており、後半戦が注目された。そして後半戦は10日目に高安に敗れ、痛い3敗目となった。ただ12日目は単独トップに立っていた湘南乃海が敗れて2敗力士がいなくなったのでトップに並んだ。13日目は湘南乃海との3敗対決を制し、3敗は琴櫻と大の里の2人となった。残り2日であり、優勝争いは3敗の2人に絞られたように見えた。ということで終盤が注目となったが14日目は阿炎に押し出しで敗れ、痛恨の4敗目となった。一方の大の里は連勝して優勝し、またしても初優勝はお預けとなった。

 11勝という数字は悪くないが、全体を通して見ても内容が良かったとは言えない。土俵際の逆転勝ちもあれば物言いが付く際どい一番もあった。ただ琴櫻は大関である。内容以前にまずは白星が求められる立場である。その意味では何とか白星を重ね、優勝争いをしたことは評価できる。また大関の立場でいえば14日目に阿炎に負けたことが全てである。大関としては絶対に負けてはいけない一番だった。照ノ富士や以前でいえば白鵬であれば終盤の大事な一番を落とすことはまず考えられない。やはりまだそれだけの地力が付いていないという見方が妥当である。

 負けた相撲に関してはやはり6日目の大の里戦である。琴櫻はもろ差し狙いだった。しかし立ち合いの圧力が強くなっている大の里に弾かれた後右を差された。すると琴櫻は左上手を取り、上手投げを打った。しかし大の里に右腰をぶつけられるような形で寄り切られた。上手を取って投げで決着がつけられると思ったのであれば、その考えは安直だと言われても仕方がない。また上手を取ると脇が甘くなるのが欠点である。それを大の里も分かっており、弱点を突かれたという感じである。結果論ではあるが、私としては二本差せると確信するのではなく、右を差された時の対応も考えて欲しかったと思っている。また考えていれば左からおっつけて絞るなど、いくらでも対応できたはずである。相撲内容は勿論だが、考えるという部分においても上を目指すにあたっては課題が多い。ただすぐに克服できる課題とは思えず、自分なりに考えて一つ一つつぶしていくしかない。

 7月場所に向けては最低でも優勝争いをし、初優勝を期待したい。また今場所負けた大の里は7月場所で優勝すれば大関昇進の可能性も十分ある。そしてスケールが大きく、番付で一気に追い越される可能性すらある。ということで今まで以上に危機感を持って相撲に取り組んで欲しい。来場所は星数だけでなく、安定感のある相撲内容を求めたい。