2024年3月場所個別評価 高安

 今場所は西前頭8枚目だったが11勝4敗の好成績だった。3連勝スタートを切り、前半戦は5勝3敗で折り返した。そして後半戦は9日目から3連勝し、11日目に勝ち越しを決めた。また終盤も3連勝し、11番まで白星を伸ばした。

 内容に関してはいつものように押し相撲と四つ相撲の併用で白星を挙げていた。また上手投げで2番、上手出し投げで1番勝っているが、土俵際での逆転技ではなく、力の違いを見せつけるような投げ技だった。場所前に34歳の誕生日を迎えたが衰えは全く感じられない。場所全体を通して見ても落ち着いた相撲が取れており、やはりこの番付で相撲を取る力士ではない。終盤は再入幕で勝ち越しの懸かる狼雅と大奄美に勝ったが、格の違いを見せる内容であり、相手が可哀想に思えるくらいだった。

 印象に残ったのが負けはしたものの6日目の御嶽海戦である。押し合いの攻防となったが頭四つとなり、動きが止まった。その後御嶽海に頭を付けられるとこらえ切れず、たまらず引いたところを押し出された。元大関同士の1分40秒にわたる熱戦であり、取組後は大きな拍手が起こっていた。また高安が土俵下で一回転したが、同じく疲れ果てた御嶽海が手を差し伸べる気遣いを見せた。派手な攻防はなかったものの、我慢比べの心理戦であり、見応えのある一番だった。

 5月場所は上位力士と対戦できる番付に戻りそうだが、二桁勝利を挙げての三役復帰を期待したい。最近は怪我が相次ぎ、休場も増えているが、上位力士の状態が上がらなければ勝てるくらいの力はありそうだ。あとは場所中の怪我は仕方がないので、場所中に怪我をしないような体調を場所前に作って欲しい。今の高安にとってはコンディショニングが大事であり、その部分では場所中よりも場所前の体調管理の方が重要かもしれない。