2024年3月場所を振り返って 優勝争い 9日目 阿炎ー尊富士戦 大の里ー若元春戦

 9日目は全勝の尊富士は阿炎戦が、そして1敗の大の里は若元春戦が組まれた。

 まずは阿炎と尊富士の一番である。阿炎にとっても直接対決で尊富士を引きずり降ろすチャンスである。また初日から二大関を破るなど5連勝スタートを切っており、好調である。その阿炎に対して尊富士がどういう相撲を取るかが注目された。しかし結果は尊富士の完勝に終わった。阿炎のもろ手突きを下からあてがいながらかわし、左をおっつけると一気に前に出て押し出した。ほぼ電車道と言っていい相撲内容だった。私的には尊富士は足が細く、平幕は一気に運べるものの、果たして阿炎のような実力者に同じような相撲が取れるか半信半疑だった。しかし三役相手にも同じような相撲を取り、全く問題にしなかった。この結果には驚いたし、私にとっては衝撃的だった。おそらく他の力士もこの取組を見て尊富士の見方が変わったのではないだろうか。

 そして大の里と若元春の一番である。相撲は大の里がもろ手突きから一気に寄り立てた。しかし土俵際で若元春に左を深く差された上に下手を取られた。そして寄り返されたものの馬力で再度土俵際に寄り詰め、そのまま寄り切った。また土俵際での攻防は非常に見応えがあった。素晴らしかったのは大の里の詰めの部分である。左は差すも深く差すと相手に右上手を取られるので浅くのぞかせて上手を許さなかった。そして右は廻しを取るのではなく、おっつけて前に出た。ギリギリの攻防だったが最後は大の里が頭を使った分白星を手に入れたという印象である。

 9日目終了時点で二人が全勝と1敗を守ったが、2敗力士のうち豊昇龍が翠富士に敗れて3敗となり、優勝争いから後退した。全勝は尊富士、1敗が大の里、そして2敗が貴景勝、琴ノ若、湘南乃海の三人となった。

続く