館内を盛り上げる男! 翠富士 相撲の取り口と課題

 相撲は押しと肩透かしを得意としている。肩透かしは左右どちらからでも打つことができる。また2023年9月場所は10勝中6勝が肩透かしであり、面白いように決まっていた印象が強い。ただ肩透かしが決まると当然対戦相手が警戒し、懐に入れない相撲を取ってくる。よって私的には一場所おきに決まっているというイメージである。そして本人は満更でもなさそうだが、私としては肩透かしの名人として語られるのはあまり好きではない。なぜなら懐に入っての投げ技も得意としているからである。あくまで肩透かしは得意技の一つであり、肩透かしを取ったら何も残らない力士ではないというのは覚えておいて欲しい。宇良の反り技のように本人がこだわりを持っているのではなく、勝つための手段として技を繰り出している感じがする。

 そして押し相撲は懐に入る相撲と上手に使い分けている。また相手の様子を見ながら攻め方を変えている。距離の取り方も絶妙なのだが廻しを取られて動きを止められてしまったらおしまいなので、そうならないことがポイントである。

 感心するのが小兵にも関わらず、まずは頭から当たり、前に出る姿勢を見せることである。この部分は師匠に徹底的に指導されているのだと思う。普通なら横へ動き回りたくなるところだが、翠富士の場合は横への動きは二次的なものである。基本的には前に出る相撲を取るので横に動かれると相手がそのスピードについて行けないといった場面もよく見られる。また前に出ると見せかけての肩透かしが決まりやすくなる。小兵の割には正攻法の相撲であり、その点で好感が持てる力士である。

 課題は正論を言えば増量かもしれないが、持ち味であるスピードが落ちてしまっては全く意味がない。そう考えると今の相撲を磨いていくのが一番である。

続く