2024年1月場所個別評価 宇良

 今場所は念願の新三役の場所となった。年6場所制となった1958年以降では6位となる31歳6か月の高齢での昇進となった。また幕内経験者が序二段に陥落しながら新小結となったのも史上初となった。膝の大怪我を乗り越えての新三役であり、誰にでもできることではない。並外れた精神力の持ち主である。先場所も西前頭筆頭で千秋楽に勝ち越しを決め、執念で新三役を手繰り寄せた。

 しかし今場所も先場所同様、初日から上位力士との対戦が続いたこともあり、苦戦を強いられた。前半戦は1勝7敗で折り返したが唯一の白星は貴景勝戦での不戦勝だった。そして後半戦は9日目に熱海富士を肩透かしで破り、相撲を取っての初白星を挙げた。しかし翌日は翠富士に押し倒しで敗れ、負け越しが決まった。ただ終盤は4連勝し、6勝9敗で場所を終えた。二桁黒星を免れた上に平幕上位で勝ち越した力士が少ないので大幅な番付の降下は避けられそうだ。

 内容に関しては奮闘するも上位力士には歯が立たなかった。惜しかったのが3日目の豊昇龍戦である。左を深く差すと切り返しを見せたものの大関の対応力が凄かった。最後は掬い投げで裏返しにされた。5日目の琴ノ若戦も左を上手く手繰ったものの右上手を取られた時点で万事休すとなった。その一方で地力は付いており、平幕との対戦が続いた終盤は持ち味を発揮した。翔猿戦は相手の上手投げに右手を付きかけながらも右手を引き、物言いが付く際どい一番だったが寄り切りで白星を手にした。そして千秋楽の竜電戦は右上手を取られたものの懐に潜り、竜電が前に出た瞬間に反り技を見せ、転がした。決まり手は伝え反りであり、自身としては2022年9月場所の宝富士戦以来の技となった。以前から体を大きくした後も反り技は狙っていくと語っており、本領発揮といったところである。

 3月場所は前頭筆頭で止められそうである。よって勝ち越しさえすれば一場所での三役復帰の可能性が出てきた。大関が力を付けており、役力士に勝つのは簡単ではない。しかし役力士に勝たないと三役復帰が見えてこないので何とかして一人でも多く倒したい。最善を尽くす中で勝機を見出していくしかない。また業師であり、館内のお客様を盛り上げるような相撲にも期待したい。