2023年11月場所個別評価 友風
今場所は4年ぶりの再入幕となり、東前頭14枚目だったが7勝8敗で負け越した。黒星スタートも2日目は宝富士に勝ち、1513日ぶりの幕内白星となった。奇しくも4年前の11月場所2日目は右足を大怪我した日でもあり、よぎるものがあったと語っていた。その後は5日目から3連勝するなど前半戦は5勝3敗と白星先行で折り返した。そして後半戦は13日目に7勝目を挙げたものの終盤は連敗し、勝ち越しは成らなかった。それでも本人は「無事に終わったことが何より嬉しいし感謝です」と語っていた。
内容に関しては突き・押しと引く相撲で白星を挙げていた。前半戦は番付が近い力士との対戦であり、自分の相撲が取れていた。しかし後半戦は番付が上の力士との対戦が増え、自分の相撲が取れなくなったという印象である。また立ち合いの当たりは強くなってきているものの安定感はやや欠けており、日によってバラつきがあった。このあたりが修正されれば幕内での勝ち越しは勿論、上の番付も目指せると思う。
素晴らしかったのは13日目の平戸海戦である。平戸海の前廻し狙いを許さず、細かい突っ張りで相手の上体を起こし、そのまま押し出した。会心の相撲内容だったが、それと同時に平幕上位まで番付を上げ、鶴竜を破った実績があることを思い出した。大怪我をしたとはいえ、やはり地力がある力士である。
それでも右膝の大怪我を克服し、再入幕を果たしたというのは一つの区切りとなりそうだ。膝の怪我は大相撲の世界ではよく聞くが、友風の怪我は右足切断一歩手前の大怪我であり、4回の手術というのがそれを物語っている。また怪我をした当初は復帰どころか歩けるまで回復できれば良い方と医師に言われ、本人も怪我の深刻さは分かっていたので最初は復帰のことなど一切考えなかったようだ。考えにあったのは日常生活に戻れるのか、それだけだった。復帰後は尾車親方、二所ノ関親方、そして大学の先輩でもある中村親方の励ましを受け、番付を戻してきた。今でも右足の感覚は鈍く、右足首の感覚はマヒしているようである。また2021年2月に障害者5級に認定され障害者手帳を交付されており、手帳を持ったままの入幕となった。奇跡の復活と言っても過言ではない。
しかし受け答えを見た限りではハキハキと答えており、悲愴感のようなものは全く感じられない。また負けても気持ちの切り替えが早く、引きずらないのが持ち味である。気持ちの切り替えは大相撲に限らずスポーツ全てにおいて大切である。また駆け引きが上手く、その駆け引きを楽しんで相撲を取っているようにも見える。
1月場所は東前頭15枚目となったが勝ち越しを期待したい。それでも今場所の内容ならおそらく勝ち越せると思う。それよりも冬場であり、怪我をするような無理な相撲は取って欲しくない。土俵際に詰められたらあっさり土俵を割ってもいいと思う。その代わりに立ち合いの当たりを鋭くし、一気に前に運ぶような相撲を取って欲しい。