2023年11月場所個別評価 宇良

 今場所は西前頭筆頭だったが8勝7敗で勝ち越した。初日から上位力士との対戦が続いたこともあり、前半戦は2勝6敗で折り返した。そして後半戦は連勝するも11日目は翔猿に敗れて7敗となり、勝ち越しに向けて後がなくなった。しかしその後は4連勝し、千秋楽に勝ち越しを決めた。

 内容に関しては上位力士との相撲に注目していたがいずれも馬力で圧倒されており、5連敗スタートと合わせて勝ち越せるとは思わなかった。琴ノ若には勝ったものの、懐に入る体勢を維持できたことが勝因であり、振りほどかれると相撲にならないといった内容が多かった。一方平幕相手にはそれなりに相撲になっており、力が付いているのは確かである。それでも前に出て勝った相撲は少なく、懐に入っての肩透かしや引き技に頼らざるを得ないのが現状である。上位と勝負できるようになるという点では課題が残った。

 それではなぜ勝ち越せたかというと、やはり懐に入ってからの技が多彩なことや押すにしてもそのタイミングが上手かったりということに尽きる。相手が見てくるというのを見切って押し、一気に運ぶことも多い。あとはやはり三役に何としてでも上がりたいという執念である。普通ならば5連敗スタートで内容も良くないとなれば悪循環に陥り、大負けしてもおかしくないところである。しかしギリギリのところで何とか踏み止まり、勝ち越しに結び付けた。膝を痛めて一時は序二段まで番付を下げており、その点では照ノ富士同様、精神力は半端ではない。

 来場所は新三役が濃厚である。苦労人であり、三役昇進は非常に喜ばしいことである。しかしその一方で上位力士には歯が立っていないという現実を忘れてほしくない。年齢は31歳だが上位力士は霧島、豊昇龍、琴ノ若は年齢が若く、更に力を付けていくことが予想される。ということは上位力士に勝つためには上位力士以上に努力が必要ということである。三役昇進は勿論一つの区切りではあるが、もっと強くなりたいという向上心を持って相撲に取り組んで欲しい。今場所以上に前に出る相撲での白星を増やしたいところだ。