2023年11月場所を振り返って 優勝争い 14日目 霧島ー熱海富士戦

 14日目。当然注目は霧島と熱海富士の2敗対決である。勝った方が優勝に大きく近づき、有利な立場に立つ。まずは霧島と対戦できる状況を作った熱海富士を評価したい。誰でも終盤で相星だからといって対戦できる訳ではない。内容的に勝てないと審判部に思われたら対戦させてもらえないのが大相撲の世界である。若さと勢いだけでなく、考えながら相撲を取り、大関への挑戦権を得た。

 しかし今場所の霧島は体の動きにキレがある。踏み込みも素晴らしいし、横への動きも速い。技の引き出しが多い上にスピードも大関の方が上であり、私には熱海富士が勝つことは想像できなかった。ただ熱海富士は時に不可能を可能にするような相撲を取ることがあり、その可能性に期待したいといったところだった。

 相撲は立ち合いからすぐに右四つに組み合う形となった。しかし霧島が鋭く踏み込んだ一方、熱海富士は右を差すのが精一杯であり、腰の位置が高くなった。その後霧島が右下手を取り、左はおっつけて熱海富士に右下手を許さない。そして霧島が体を離すと左を巻き替え、腕を返すと熱海富士の上体が起き、そこを一気に寄り切った。これで霧島は2敗を守り、優勝に大きく近づいた。

 霧島は相手得意の右四つに組み合ったという点で大関らしい相撲を取った。やはり右下手を取り、相手の動きを止めたことが勝因である。右下手を取っていなければ熱海富士の土俵際の突き落としを食っていた可能性もあったが、相手に逆転勝ちの余地を全く与えなかった。厳しい相撲を取り、大関として格の違いを見せつけた。

 一方熱海富士は立ち合いで踏み込めなかったことが全てである。力量的にも一歩でも前に出て霧島を後退させなければいけなかった。仕方がないが、現状ではここまでが精一杯ということだと思う。しかし本場所で霧島と対戦できたということはいい勉強である。もっと稽古をして力を付けていくしかない。

 14日目終了時点で2敗が霧島、3敗が熱海富士であり、直接対決が終了したということで霧島が二度目の優勝に向けて極めて有利な立場に立った。

続く