2023年9月場所を振り返って 三賞など

 さて三賞は異例の決まり方となった。殊勲賞は熱海富士と14日目終了時点で4敗だった貴景勝を除く三人が候補に上がり、いずれも優勝すればという条件付きでの受賞が決まった。しかし千秋楽は4敗の三人がいずれも敗れ、熱海富士は決定戦で敗れたので該当者なしとなった。敢闘賞は千秋楽を迎えた時点で優勝争いの単独トップに立っていた熱海富士で決定し、初受賞となった。技能賞は候補者がおらず、受賞者なしとなった。ということで受賞者は熱海富士一人となり、三賞受賞が一人に止まるのは、琴勇輝が殊勲賞を受賞した2016年3月場所以来となった。

 そして幕内同様面白かったのが十両の優勝争いである。主役は間違いなく新十両の大の里だった。ストレートで勝ち越しを決めると9日目も勝利し、連勝を9に伸ばした。しかし10日目に一山本に敗れ、連勝がストップした。また一山本が勝ったことで1敗でトップに並んだ。その後は一旦は一山本が単独トップに立つも14日目は一山本が敗れ、大の里が勝ったので再び2敗で並んで千秋楽を迎えた。大の里は十両結びの一番で狼雅と対戦した。大の里も勿論勝ちたいが、狼雅は東筆頭で7勝7敗であり、勝てば新入幕が濃厚となる。狼雅にとっても負けられない一番となった。相撲は立ち合いから大の里がもろ手突きで攻めるも狼雅は大の里の攻めをかいくぐり、左前廻しを取った。しかし大の里は左を差して構わず前に出た。すると狼雅は土俵際で左から掬い投げを打ち、大の里はたまらず転がった。この結果一山本の優勝が決まった。成績は13勝2敗であり、二度目の十両優勝となった。そして三場所ぶりの入幕が有力となった。

 一山本は幕内経験者であり、結果として若手の勢いを止めたという意味では幕内の優勝争いと似たような形となった。そして一山本と狼雅が大の里の勢いを止めた。しかし大の里の相撲内容は末恐ろしいとしか言いようがない。立ち合いの体当たりだけでほぼ勝負を付けた相撲も多く、相手を圧倒していた。熱海富士同様、上位力士と対戦しても通用する力は持っていそうである。おそらく十両は通過点であり、今後が非常に楽しみである。