2023年9月場所を振り返って 優勝争い その8

 さて注目は千秋楽の取組である。千秋楽だけは14日目の全取組終了後に組まれるが、一番はやはり熱海富士の対戦相手である。結局役力士ではなく朝乃山戦が組まれた。私的には役力士との対戦だと思っていたので少し意外だった。協会審判部としては熱海富士は再入幕の若手力士で実績がなく、これ以上役力士と対戦させたくなかったのかもしれない。また4敗力士と対戦させるのも少し物足りなさがあったのだと思う。ということで阿炎と同じ前頭2枚目であり、元大関の朝乃山が丁度いいと考えたのではないだろうか。朝乃山には失礼だが、噛ませ犬的な意味合いもあったように感じる。協会としては役力士よりも朝乃山に勝てば優勝ということでいいではないかという意図が見て取れた。

 そして4敗の四人はいずれもこれより三役での取組となった。熱海富士が負けた場合は優勝の可能性が出てくる。貴景勝は同じく4敗の大栄翔と対戦。高安は霧島戦、北青鵬は豊昇龍戦が組まれた。まずは貴景勝の対戦相手である。番付通りなら霧島戦だが、対戦成績は霧島戦が8勝7敗とほぼ五分に対して大栄翔戦は17勝7敗と大きくリードしており、熱海富士が負けた場合は大関に頑張ってもらいたいという審判部の考えがあったと思う。また高安と北青鵬に関しては高安は元大関とはいえ、大関に上がったばかりで力強い相撲を取る霧島相手に勝つのは厳しいと思った。また北青鵬は豊昇龍とは5月場所に対戦している。そして豊昇龍は勝ち越しが懸かっており、絶対負けられない一番だったのでこれも勝つのは厳しいと感じた。ということで熱海富士が負けた場合は貴景勝が大栄翔に勝ち、二人による決定戦になる可能性が高いと私は見ていた。

続く