2023年9月場所を振り返って 優勝争い その4

 12日目。熱海富士は大栄翔戦が組まれた。大栄翔は関脇でもあり、大関候補でもある。前日対戦した翔猿より格上なのは明らかである。ということで若手で実績のない熱海富士は負けてもともとであり、大栄翔の方がやりにくかったと思う。相撲は押し合いから熱海富士が徐々に後退すると右へいなして残し、再び押し合いとなった。そして大栄翔は熱海富士を見ながら慎重に押し、熱海富士が押し返そうとしたところを左へ体を開いて引き落とした。連勝を止めた大栄翔はホッとしたと思う。役力士として経験の違いを見せた。しかしそれ以上に光ったのが熱海富士の健闘ぶりである。大栄翔の突き押しを残し、土俵中央での押し合いに持ち込んだ。負けはしたものの、互角の相撲を取ったと言っていいと思う。改めて能力の高さを示した。

 3敗力士のうち剣翔は敗れたが貴景勝と高安は3敗を守った。高安は錦木戦だったが押し合いから錦木にいなされ、押し込まれるも土俵際で左に体を開いての叩き込みが決まった。高安も土俵を割っており、何とか勝ったという内容だった。貴景勝は琴ノ若戦だったが立ち合いからぶちかまし、琴ノ若が下がりながら左に回り込むところをしっかりと見ながら押し出した。好内容の相撲であり、優勝も十分狙えるといった相撲だった。

 12日目終了時点で2敗は熱海富士。そして3敗が貴景勝と高安の二人であり、星の差が一つに縮まった。これで優勝争いが再び分からなくなり、面白くなってきた。

続く