2023年7月場所個別評価 伯桜鵬

 今場所は新入幕で西前頭17枚目だったが11勝4敗の好成績で技能賞と敢闘賞を受賞した。連勝スタートとなり、前半戦は6勝2敗で折り返した。そして後半戦は9日目は大翔鵬に敗れ、3敗となったが10日目からは連勝した。12日目は小結の阿炎を押し出しで破ると13日目は優勝争いのトップを走っていた錦木を内掛けで破った。翌14日目は優勝争いで単独トップに立った北勝富士を突き落としで破り、優勝争いのトップに並んだ。しかし千秋楽は豊昇龍との3敗対決となったが上手投げで敗れ、初優勝を逃した。

 内容に関しては自分の力を試すというよりもその日その日で対戦相手を研究し、突き押しと左四つの相撲を使い分けていた。最初から研究するあたりが伯桜鵬の性格の一端を表しているかもしれない。やはり語るべきは終盤の相撲である。13日目の錦木戦は頭から当たって押すも錦木に左を差され、一気の寄られるも左を差し、右上手を取って残した。寄り立てられた割には表情は落ち着いており、相手の出方をうかがっていた。そして体を左右に振りながら錦木をおびき出すと錦木の右足が前に出た瞬間、内掛けを繰り出し、錦木はたまらず土俵を転がった。実績のある力士相手に強かな相撲を見せた。只者ではない。14日目の北勝富士戦は立ち合いから得意の左四つに組み止めた。これも長い相撲となったが体が離れ、北勝富士が押し込んできたところで右から突き落とした。北勝富士は伯桜鵬の右からの攻めを考えておらず、相手を術中にはめた相撲と言ってもいいと思う。やはり只者ではない。

 もう一つ印象に残ったのが精神面である。12日目の阿炎戦は三度の立ち合い不成立で打ち出し後に審判部から注意を受けた。新入幕であり、初の役力士との対戦でありながら臆せず、立ち合いで駆け引きを見せた。良くないことだが、19歳にして老獪さを兼ね備えている。なかなかできることではない。14日目の北勝富士戦も立ち合いから張り差しを見せて相手の動きを止めており、その後も平然としているあたりはやはり大物である。

 場所後の夏巡業は左肩を痛めたので全休となったのが少し気になる。左肩のテーピングは以前から施しており、中学時代に痛めた古傷のようである。師匠の宮城野親方は手術の可能性を示唆したが、関節であり、手術したとしても良くなるとは限らないので難しい判断を迫られそうだ。

 9月場所は西前頭9枚目となったが稽古も十分にできておらず、休場の可能性が出てきた。それなりに動かせるようになれば出場してくると思うが、どう判断するかが注目である。そして怪我は別にして、能力に関しては三役には上がれそうである。まだ先の話ではあるが、問題はその後である。大関昇進となると相手を押し出すか、組み止めるか、いずれにしてもパワーが求められる。伯桜鵬は身長181センチ、体重153キロであり、上位力士に入ると体格で少し劣る。このあたりをどう克服していくかが先々に向けては課題となる。勿論目先も大事だが、私としては目先だけでなく、将来を見据えた稽古をしてほしいと思っている。出世すれば上位力士の世代交代が更に進む可能性があり、今後も注目の存在となりそうだ。