2023年7月場所個別評価 大栄翔

 今場所は9勝6敗という成績だった。3連勝スタートも4日目は錦木、6日目は琴ノ若に敗れ、6勝2敗で前半戦を折り返した。そして後半戦は連勝し、10日目に勝ち越しを決めた。しかし11日目からは3連敗して5敗となり、場所後の大関昇進が厳しくなった。14日目は立ち合いの変化で阿武咲に勝ち、連敗を止めた。しかし千秋楽は隆の勝に敗れ、結局9勝で場所を終えた。

 まず触れなければいけないのが、一部では言われていたが、13日目の若元春戦で叩き込みで敗れた際に胸を強打し、その日のうちに病院に行き、骨折が判明した。また全治一か月の診断だったが残り二日勝てば三場所合計32勝となり、大関昇進の可能性も出てくるため、強行出場を決意したようだ。14日目の変化は「怖くて当たれなかった」と語っていたが納得である。千秋楽も骨折が原因で腰が引けており、これでは勝てる訳がない。途中までは大関に向けて順調に星を重ねているように見えたが、まさかの結末となってしまった。

 内容に関しては確かに突き押し相撲には安定感があった。しかし厳しい言い方をすれば安定感だけでは上に上がれない。一気に前に出る力と爆発力が必要になってくる。結局その力がなかったからこそ終盤に3連敗したということだと思う。私としては後半戦に調子を上げ、一気に押し出す相撲を期待していたが、調子が上がらないまま場所が終わったという感じである。

 場所後の夏巡業は休場していたが、8月19日から合流した。現在は基礎運動に加え、軽いぶつかり稽古までできるようになったようだ。ということで実戦稽古まではもう少し時間がかかりそうである。今は体調の回復に専念したい。

 9月場所は万全の体調で臨むのは厳しそうである。あとはそれまでの稽古の「貯金」に頼るしかない。ということで大関獲りではなく、勝ち越して関脇の番付を守りたいところだ。また最近は大関に向けて稽古を頑張ってきたはずなので、一旦心身を休ませたい。しかし平幕に落ちてしまっては一からやり直しになるので三役の座を維持しつつ、今後の巻き返しを期待したい。