2023年7月場所を振り返って 優勝争い その9
そして豊昇龍と伯桜鵬の取組である。勝った方が北勝富士との優勝決定戦に進出する。特に伯桜鵬が優勝すれば新入幕優勝は109年ぶり、十代での優勝は1992年1月場所の貴花田以来31年ぶりということでファンとしても歴史的瞬間を見届けることになる。ポイントは伯桜鵬の動きに豊昇龍がどう対処するかの一点に尽きる。伯桜鵬は12日目から阿炎、錦木、北勝富士に勝っており、内容を見ても只者ではない。勿論初対戦であり、注目の一番となった。
何より相撲の前の仕切りの時からのにらみ合いが凄かった。朝青龍のおいが豊昇龍、そして白鵬の弟子が伯桜鵬ということで代理戦争を思わせるくらいの雰囲気だった。最後の仕切りの前、伯桜鵬は塩をまくとすぐに豊昇龍を睨みつけた。そしてそれを見た豊昇龍も睨み返す。ただならぬ空気の中での立ち合いとなった。しかし勝負は呆気なく付いた。豊昇龍が左から張って差し、右上手を取るとすぐに上手投げで破り、役力士として貫録を示した。豊昇龍も前日の伯桜鵬の相撲を見て、相撲を長引かせたらまずいと思ったのだろう。結果的に伯桜鵬に隙を与えず、厳しい相撲で難敵を退けた。また新入幕の挑戦を真正面から受け止め、勝ったことで大関昇進に向けて大きく前進したのは間違いない。確かに豊昇龍の表情は怖かったが相撲は落ち着いて取れており、それが印象的だった。
一方伯桜鵬は前日の北勝富士戦のように上手くはいかなかった。おそらく場所前の手合わせもなかったと思われるのでこの結果は仕方がない。しかし本場所で肌を合わせたことで足りない部分が分かったというのもあるのではないか。まだ19歳であり、この経験を財産にしてどんどん強くなっていって欲しい。
続く
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