2023年7月場所を振り返って 優勝争い その5

 次に2敗の錦木は3敗の伯桜鵬との対戦となった。ともに優勝に向けて大事な一番である。相撲は立ち合いから錦木が右差しを狙い、伯桜鵬は左おっつけで右差しを許さない。しかし錦木が左を差すと伯桜鵬の右突き落としに乗じて一気に寄った。しかし伯桜鵬は網打ちなどでこらえ、残すと土俵中央で左四つに組み合う形となった。伯桜鵬は右上手を取っており、錦木は上手は取っていなかったので伯桜鵬が有利なようにも見える。しかし伯桜鵬のあごは上がっており、体も錦木の方が一回り大きい。実力も含めれば私は錦木の方が有利だと思った。しかし先に動いたのは伯桜鵬だった。自ら相手を揺さぶり、錦木の右足が前に出たところで左内掛けで転がした。実に鮮やかな足技だった。師匠の元横綱白鵬の宮城野親方によると、相手の疲れや呼吸の乱れを読み、それに合わせた力の出し入れが非常に上手いみたいだ。また立ち合いから離れる相撲を取っており、得意の左四つに組んだとはいっても意図しない相撲の流れになっている。そんな中で冷静さを保ち、勝機を見出すあたりはやはり大物である。錦木というよりも伯桜鵬の凄さだけが目立った一番だった。これで両者ともに3敗となり、北勝富士が単独トップに立った。

 そして3敗の豊昇龍は霧島戦だった。立ち合いで右へ動いて右上手を取ると頭を付けて左前廻しも取った。少しずつ有利な体勢を作ると最後は霧島の左下手投げが呼び込む形となり、そこを一気に寄り切った。豊昇龍の立ち合いが変化と見るかどうかは人によって分かれると思うが、霧島に勝つにはこれしかなかったということかもしれない。印象は良くないかもしれないが白星は白星である。これで二桁勝利となったが大関昇進に向けては内容を含めて残り二日次第となった。

 13日目終了時点で2敗は北勝富士一人となった。そして3敗で豊昇龍、錦木、伯桜鵬の三人が追いかける展開となった。

続く