2023年7月場所を振り返って 優勝争い その3

 12日目。単独トップの錦木は新入幕の湘南乃海との割が組まれた。実績は勿論錦木の方が上だが湘南乃海は6場所連続勝ち越し中で勢いがある上に錦木より体が一回り大きい。私は湘南乃海が勝つ可能性もあると見ていた。相撲は互いに左四つが得意ということですぐに左四つに組み合った。そして両者ともに左下手は取るも右上手は取れないという形になった。先に動いたのは錦木である。右をこじ入れながら前に出ようとした。しかし湘南乃海は錦木の右差しを許さない。ただ湘南乃海も右上手を取ろうとするがなかなか取れない。今度は逆に湘南乃海が寄ると同時に右から小手投げを打った。すると錦木はたまらず土俵に転がった。やはりまともに組めば体が大きい方が有利である。懐が深いのでそれが活きた相撲内容だった。一方の錦木は優勝に向けては痛い2敗目となった。

 そして豊昇龍と北勝富士の2敗同士の対決があった。相撲は北勝富士が立ち合いで頭から当たりながら左に動いた。その後は押し合いの攻防となったが北勝富士が押しながらじわじわと前に出た。一方豊昇龍は右前廻しを狙うも北勝富士が左からおっつけるなどして許さない。結局少しずつ土俵際に押し込まれ、豊昇龍はそのまま押し出された。北勝富士は会心の一番だったと思う。持ち味である重心の低い押し相撲で豊昇龍に廻しを与えなかった。豊昇龍は何もできずに完敗という内容だった。3敗となり、役力士との対戦がまだ残っているので優勝に向けては厳しくなってきた。

 そしてもう一人忘れてはならないのが新入幕の伯桜鵬である。この日は阿炎戦であり、初の役力士との対戦となった。相撲は阿炎の突っ張りにまともに引いてしまい、俵に詰まるも押し返し、今度は阿炎が引いたところを一気に押し出した。新入幕ながら阿炎のスピードに対応できるところを見せつけた。またこの取組は4度目の立ち合いで立っており、取組後両者が審判部に呼び出され、注意を受けた。そして合わなかった3度のうち、伯桜鵬は2回阿炎に突っ掛けている。普通なら先輩の阿炎に合わせて立つところだと思うが、伯桜鵬は自分の間合いで立とうとしていた。確かに立ち合いで合わせようとしないのは褒められたことではない。しかし初めての役力士との対戦で自分の間合いで立とうとする度胸は凄い。そして只者ではない。三役力士に勝っただけでなく、立ち合いの部分でも大物感を見せた。これで伯桜鵬は9勝3敗であり、首位と星一つ差ということで優勝争いに絡んできた。

 12日目終了時点で2敗が錦木と北勝富士の2人、そして3敗が豊昇龍と伯桜鵬の2人となった。錦木が負けたこと、そして伯桜鵬が優勝争いに加わったことで先が分からなくなってきた。

続く