2023年5月場所個別評価 平戸海

 今場所は西前頭9枚目だったが9勝6敗という成績だった。前半戦は6勝2敗で折り返した。そして9日目は北勝富士に勝ち、勝ち越しに王手を懸けた。しかし10日目からは4連敗し、勝ち越しを前に足踏みをした。それでも14日目は琴恵光を寄り切りで破り、勝ち越しを決めた。そして千秋楽も勝ち、9勝で場所を終えた。

 内容に関しては場所前に左前廻し狙いの記事が見られたが、記事の通り左前廻しを狙う相撲が多かった。しかし対戦相手もそれは意識しており、対戦相手によって立ち合いを変えていた。特に良かったのが8日目の明生戦である。ここまで7戦全勝であり、好調の明生相手に立ち合いから左前廻しを狙いに行くもなかなか取れない。そして突き押しに変え、押し込んだ後に左前廻しを取った。その後明生がそれを嫌って抱えに来たところで左を深く差し、一気に寄り倒した。勿論左前廻しを取れたことが勝因だが、素晴らしかったのはその後の攻めである。左の廻しにこだわるのではなく、相手が抱えたところで懐に入っての速攻相撲を見せた。平戸海は身長177センチ、体重135キロであり、どちらも幕内力士の平均を下回るので組み止める相撲は少し無理がある。ということで左前廻しを狙いつつ、二本差すにしても押すにしても、相手の懐に入る相撲を取って欲しいと私は考えている。そして明生戦のような速い相撲が取れればそれが一番理想である。また後半戦は4連敗したが、そのうちの3敗は元大関朝乃山、今場所大関獲りの関脇霧馬山、そして同じく関脇豊昇龍であり、上位力士の力量を知るという意味ではいい経験ができたと思う。すぐには無理かもしれないが、稽古と本場所の土俵でその差を少しずつ詰めていって欲しいところだ。

 7月場所は自己最高位を更新し、東前頭5枚目となった。上位力士総当たりの番付ではないが、横綱・大関との対戦の可能性が十分ある番付である。おそらく当たるとすれば後半戦だと思うのでそれまでに白星を重ね、流れに乗ったところで対戦したい。また当然勝ち越しを期待したいが、年齢はまだ23歳と若いので勝ち負けではなく、まずは自分の力がどれだけ通用するのか試すくらいの気持ちで相撲を取って欲しい。今後が非常に楽しみな若手期待の力士である。