2023年1月場所個別評価 朝乃山 

 今場所は西十両12枚目だったが14勝1敗のハイレベルな成績で初となる十両優勝を果たした。初日から10連勝であり、元大関ということでここでは力が違った。11日目は大翔鵬に敗れて初黒星となった。13日目は金峰山との1敗同士の対決となった。相撲は金峰山の突き押しを下からあてがい、動きを止めたかに見えた。しかし右のど輪を入れられると一気に後退。朝乃山は土俵を割ったが右からの突き落としで僅かに金峰山の手が付くのが早く、物言いが付いたが軍配通り朝乃山の勝ちとなった。辛くも勝ちを拾った格好だが、十両優勝に向けては大きな一勝だった。結局14日目に朝乃山が勝ち、金峰山が敗れ、星二つ差となったのでこの時点で朝乃山の十両優勝が決まった。

 内容に関しては右四つに組み止める相撲が多かったが相手もそれは分かっており、四つや廻しにこだわらず、前に出る相撲も見られた。特に良かったのが6日目の狼雅戦である。右の相四つだが立ち合いから狼雅に左上手を取られ、朝乃山は左上手を取れず、不利な体勢となった。しかし朝乃山は右下手を取り、左はおっつけて狼雅の上体を少しずつ起こしていった。徐々に有利な体勢を作ると狼雅の左上手が伸び、最後は左を巻き替えて両差しとなり、寄り切った。以前なら右四つの型にこだわっていたところである。しかし我慢の相撲で自分の形ではなく、相手の上体を起こすことに専念した。その部分では以前の朝乃山ではない。相撲に対する意識が明らかに変わってきている。私的には今後期待したくなるような内容の一番だった。

 3月場所は幕内復帰は叶わず、東十両筆頭となった。しかし力があるのは分かっており、気にすることではない。ただ十両上位ということで今場所ほどはスピードで圧倒はできないと思う。予測としては今場所のように14番は勝てないと思うので12~13勝を挙げ、5月場所で前頭一桁を狙うのが現実的なところである。また大事なのは勝ち星だけではない。内容である。今場所のように前に出る相撲、そして上を見据えての相撲内容が求められる。怪我で序二段まで転落し、横綱まで登り詰めた照ノ富士も時には負けており、白星さえ並べればいいというものではない。三役復帰、大関復帰、そして横綱昇進をイメージしながら相撲を取って欲しいところだ。しかし繰り返しになるが相撲に対する意識が変わってきており、今いる三役力士以上に期待できる存在である。