2023年1月場所個別評価 錦木

 今場所は9勝6敗という成績だった。前半戦は5勝3敗で折り返した。そして後半戦も白星を伸ばし、13日目に勝ち越しを決めた。千秋楽は勝てば二桁勝利だったが若隆景に敗れ、二桁には届かなかった。また千秋楽は「これより三役」に初めて名を連ねた。「これより三役」とは千秋楽の幕内最後の三番であり、東西三人ずつが土俵に上がり、四股を踏む。本人は相撲の事よりもそれしか考えていなかったようだ。本来は三役以上の力士が務めるものだが、若隆景の対戦相手として抜擢された形であり、名誉なことでもある。

 内容に関しては左を差してから一気に前に出る相撲は力強かった。今場所は押し出しで4番勝っており、左を差せなくても圧力で構わず前に出ていた。特に良かったのが8日目の阿武咲戦である。阿武咲のぶちかましを受け止め、左を差すと巻き替えに来たところを一気に寄り切った。この日に限らず今場所は前に出る圧力が強かった印象がある。負けはしたものの、若隆景戦も相手が引いたところを押し込み、見せ場は作った。今後に向けても非常に楽しみである。

 3月場所はは西前頭3枚目となった。今場所は役力士との対戦は若隆景戦だけだったが、今度は上位総当たりの場所となる。しかし今場所のような相撲が取れれば勝てる可能性は十分ある。本人が言うようにまずは勝ち越したい。そして目指すは三役である。年齢は32歳であり、今がチャンスといったところだ。上位力士を倒した実績はあり、その資格は十分持っている。三賞受賞は一度もなく、地味な力士という印象が強いが、三役力士も軽く見ていると痛い目に遭いそうだ。周囲の評価を覆す活躍を期待したい。