2020年9月場所個別評価 貴景勝

2024年5月22日

 9月場所は12勝3敗の好成績だった。12勝は大関としては自己最多である。連勝スタートも3日目は北勝富士に押し出されて初黒星。4日目からは白星を重ねるも8日目は元大関栃ノ心に叩き込みで敗れ、前半戦は6勝2敗で折り返した。そして後半戦は2敗を守り、13日目は2敗同士で正代と対戦。しかし突き落としで敗れて3敗となり、優勝争いから一歩後退した。それでも14日目は新入幕で正代と並んで優勝争いの先頭を走っていた翔猿を叩き込みで破り、翔猿の勢いを止めた。また14日目終了時点で正代とは星一つの差であり、優勝の可能性を残して千秋楽を迎えた。結局自身の取組の前に正代が翔猿に勝ち、優勝を決めた。しかし結びの一番も気落ちせず、むしろ気合十分の相撲で朝乃山を押し倒しで破り、場所を終えた。

 内容に関しては優勝は逃したものの優勝してもおかしくないというくらい素晴らしかった。決まり手を見ても大半は押し出しであり、引いて勝った相撲は14日目の翔猿戦だけである。また7月場所とは違って引きや叩きに頼らず、立ち合いで相手を押し込んでいた。ただ唯一残念だったのが3日目の北勝富士戦である。押し込んだものの、まともに引いてしまい、相手を呼び込んでしまった。そこを一気に押し出された。負けた相撲に関しては8日目の栃ノ心戦は立ち合いの変化で負けたがこれは仕方がない。13日目の正代戦は大関として大関を狙う力士を相手に真っ向勝負をした。結果は突き落としで敗れたがこれは勝った正代をほめたい。時間は短かったが見ごたえのある一番だった。

 11月場所に関しては優勝争いは勿論、2年ぶりとなる優勝を期待したい。7月場所に痛めた左膝は本人が語っていたように全く問題なかった。本人も手ごたえを感じているようである。9月場所のような相撲を取り続けていれば必ず優勝のチャンスは回ってくる。そして狙わずとも優勝できる。ただ身長175センチ、体重183キロという体型であり、朝乃山のようにゆとりのある体型ではない。上を目指すのであれば以前の日馬富士のように2場所連続優勝で一気に上がりたいところだ。9月場所は両横綱が休場しており、チャンスは十分ある。あとは調子がいい時に一気に駆け上がりたい。24歳と年齢は若いが個人的には停滞してほしくない。また前相撲から取って初土俵から28場所で大関に昇進しているがこれは年6場所制が定着した1958年以降日本出身力士としては史上1位の記録である。その部分でいえば貴景勝は横綱を目指さなければならない力士である。あとは体型が体型なので怪我には気を付けてほしい。まずは11月場所も大関としての仕事を期待したい。