2022年9月場所個別評価 高安

 先場所は場所前に部屋に新型コロナ感染者が出たため全休となり、番付は西前頭4枚目に据え置かれた。ということで休場明けとなったが11勝4敗の好成績で6度目の敢闘賞を受賞した。前半戦は6勝2敗で折り返した。そして後半戦は9日目に照ノ富士を破り、46場所ぶりの金星ということで昭和以降では歴代二位のブランク金星となった。そして10日目に勝ち越しを決めるも11日目は妙義龍に敗れて3敗となり、優勝争いから後退した。しかし12日目からの役力士との対戦は3連勝し、千秋楽は2敗で単独トップの玉鷲と星一つ差での直接対決となった。しかし本割で敗れ、またしても優勝は成らなかった。

 内容に関しては押し相撲と四つ相撲で白星を挙げていたが、今場所は押し相撲での白星が多かった。また勢いというよりも安定感のある押し相撲で勝っていた印象が強い。

 やはり一番に取り挙げたいのは久々の金星となった照ノ富士戦である。立ち合いで右にずれ、押し合いとなったが横綱に右を差されそうになったところで引きながら左に回り込んで残し、最後は蹴返しで横綱が呼び込んだところを押し出した。何が何でも四つには組まないという強い意志が金星を引き寄せた。また12日目からの3連勝はいずれもかち上げから相手の体を起こし、引き技で仕留めた。大関に上がる頃の相撲を観ているようだった。千秋楽の玉鷲戦は仕方がない。玉鷲の攻めを残せば高安に分があったと思うが、玉鷲がそれを許さなかった。それよりも星一つ差での千秋楽の直接対決となったのが痛い。結果論だが、11日目に妙義龍に敗れた一番は勿体無かった。妙義龍がのど輪押しをするなど相撲を変え、頭四つの形となった。そして動きが止まり、しばらくすると妙義龍が引き、間隔が空いたところで右を差し、懐に入った。結局高安は対応できず、最後は下手投げで敗れた。優勝するためには劣勢になった時の対応力も求められる。またそこでの勝ち負けが優勝できるかどうかの大きな境目となる。この一番は今後の課題としてほしいところだ。

 来場所は平幕上位の番付となりそうだが、二桁勝利を挙げ、三役復帰を目指したい。そして優勝に関しては私は平幕上位より下の番付の時がチャンスだと見ている。惜しくも優勝を逃した今年の3月場所の次の5月場所は東前頭筆頭に番付を上げ、初日から上位力士との対戦が続いたものの黒星が増え、負け越している。年齢は32歳であり、おそらく序盤から上位力士と当たって連勝する力は残っていないと思う。今場所のように序盤は平幕力士相手に白星を重ね、勢いが付いたところで上位力士と対戦した方が優勝の目が出てきそうだ。また本人は何度でも挑戦すると語っているが、何度も回ってこない可能性もある。次チャンスが回ってきた時は何が何でも逃さないくらいの気持ちで臨んでほしい。