2025年11月場所個別評価 藤ノ川

 今場所は東前頭12枚目だったが9勝6敗という成績だった。5連勝スタートを切り、7日目までは6勝1敗だった。しかし8日目から4連敗し、勢いが止まった。それでも12日目は佐田の海に勝って連敗を止めると13日目は阿炎を突き落としで破り、勝ち越しを決めた。

 内容に関しては二本差す相撲と押し相撲で白星を挙げていた。頭から当たれる上にスピードが速く、相手の懐にも素早く入れる。また相手の出方を見切った上で思い切った相撲を取ることもある。前に出る相撲を取りつつも技の引き出しをたくさん持っており、対戦相手にとっては厄介である。

 また4連敗に関しては小兵なので一つ歯車が狂うと対処されてしまう。本人が言うように切り替えの問題かもしれないが、一番一番作戦を練っていくタイプなので仕方がない部分もある。

 相撲に関しては初日の狼雅戦は当たってすぐに二本差すと一気に寄り倒した。出足が鋭く、力が付けば上位力士が相手でも通用しそうである。3日目の大栄翔戦は大栄翔の突きを下からあてがいながら右へいなすと押し合いの攻防となった。そして前に出てくる大栄翔を右にいなして泳がせるとそのまま押し出した。突きといなしのバランスが絶妙であり、相撲センスの良さを見せた。そして13日目の阿炎戦は阿炎が左張り手から突き立てたが粘り強くあてがって凌ぎ続けた。その後押し込まれてのけぞりながらも土俵際で左へ突き落とした。大栄翔と阿炎は三役経験者かつ優勝経験者であり、勝てるというのはそれなりの実力を持っていると言っていいと思う。今後が非常に楽しみである。

 来場所は自己最高位の西前頭7枚目となったが勝ち越しを期待したい。ぶちかますにしても変化するにしても思い切りが良く、しかも相手の攻めを受けることも多いので理事長がファンというのもうなずける。もう少し力を付け、上位力士と対戦できる番付に上がれば嫌がられる存在になりそうだ。私としても役力士との対戦が早く観たい。土俵が更に盛り上がることは間違いない。