2025年11月場所個別評価 義ノ富士
今場所は東前頭5枚目だったが9勝6敗で2場所ぶり2度目の技能賞を受賞した。また四股名を草野から義ノ富士に改名した。前半戦は6勝2敗で折り返した。そして後半戦は好成績ということで9日目から上位力士との対戦が続いた。10日目は全勝の横綱大の里を破って初金星を挙げた。続く11日目は関脇安青錦を回転の速い突っ張りで突き出した。ただ終盤は失速して二桁勝利と新三役は逃した。
10月上旬に右足を痛め、ロンドン公演は不参加となった。そして場所前1週間で相撲を取る稽古をして、思わしくなければ休場する方向だったみたいだ。本人的には何とか間に合ったといったところかもしれない。しかしフタを開けてみれば体が良く動いており、不安を吹き飛ばす活躍を見せた。内容に関しては突っ張りと右四つに組んでの速攻相撲で白星を重ねた。
やはりハイライトは大の里戦と安青錦戦である。大の里戦は当たってすぐに右を差し勝つと左ものぞかせ、大の里の引きに乗じて押し出した。大学時代も似た形で勝っているようであり、対戦経験が生きたみたいである。いずれにしても大の里に初黒星を付け、その後の優勝争いが面白くなったのは事実である。安青錦戦はぶちかましてから突き放して安青錦の上体を起こすとそのまま一方的に突き出した。幕下時代を含めると3戦3勝であり、今回も勝ち方を心得ているような内容だった。この2番だけでも間違いなく優勝争いを盛り上げた立役者である。
そして忘れてはいけないのが7日目の平戸海戦である。やや当たり負けしたが右四つに組み、左を巻き替えてモロ差しとなった。その後平戸海の右巻き替えに乗じて寄り詰めたが平戸海が何とか残した。そして左上手を取って左に回っての上手投げで崩して寄り切った。最後の左上手を取った後の動きはやはり非凡なものを持っている。また九州対決を目まぐるしい攻防の末に制した。負けた平戸海は取組後いつも以上に悔しそうな表情を浮かべていたのが印象的だった。
課題はやはり地力強化である。終盤に連敗しており、上位力士に勝てる能力はあるものの、場所を通して安定感のある相撲を取っているとは言えない。この部分は同部屋の伯桜鵬改め伯乃富士にも当てはまる。
来場所は自己最高位の西前頭筆頭となった。上位総当たりとなり、今場所以上に地力と底力が問われる。相撲内容的には引き続き流れのある連続性のある相撲を磨いていきたい。身長183センチ、体重153キロで均整の取れた体格をしているがスピードが身上であり、増量はしない方がいいかもしれない。また増量したとしても動ける体は保ちたい。勿論目先の目標は新三役だが、三役で満足されたら困る器である。私的には三役というよりも三役ろり上を目指すということを視野に入れながら稽古に取り組んで欲しいと思っている。
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