2025年11月場所個別評価 若元春
今場所は西前頭2枚目だったが8勝7敗という成績だった。初日から役力士との対戦が続いたこともあり、序盤は1勝4敗と黒星が先行した。しかし6日目は立ち合い変化で豊昇龍から金星を挙げると翌7日目は琴櫻を破る活躍を見せ、前半戦は4勝4敗で折り返した。そして後半戦は全て平幕との対戦となったが白星を伸ばすと14日目に勝ち越しを決めた。
内容に関してはいつものように左四つに組み止める相撲で白星を挙げていた。それにしても豊昇龍戦の立ち合い変化は正直驚いた。確かに最近はスピードで圧倒されており、その点では変化は理解できる。ただ基本的には変化する力士ではなく、館内のお客さんだけでなく、周りの力士も驚いたと思う。よって今後に向けては豊昇龍に限らず、他の力士にも効果があったと見ている。8日目の義ノ富士戦は相手の右カチ上げを受け止めると左を差して下手を取った後右上手もつかみ、義ノ富士の動きを止めた。その後寄り詰めると右上手を離して胸を突いて押し倒した。やはり廻しさえ取れればまだまだ強い。新鋭相手に経験の違いを見せつけた。
負けた相撲に関しては2日目の安青錦戦が印象に残っている。カチ上げから左を差した後右上手を取り、十分な形を作ったかに見えた。しかし安青錦に左下手を取られた後右前廻しを取られると同時に頭を付けられ、左が封じられた。最後は引き付けられて前に出られて寄り倒された。安青錦は先場所負けた経験を生かした一番だった。今度は若元春が考える番である。安青錦相手には自分の相撲を取ること以上に上体を起こすことが不可欠である。私的には安青錦と大きな力の差があるようには見えず、来場所は借りを返したい。
来年1月場所は1年ぶりの三役復帰となり、西小結となった。年齢は32歳となり、ベテランの域に入ってきた。ここからは力任せの相撲を取るよりも左四つの相撲を磨きたい。またどうしても廻しを取って組み止める相撲になってしまうので、廻しを取れなくても勝てるようにするなど、改善の余地があるように見える。そして弟の若隆景とは違って独特の感性を持っているのでその感性を磨いていきたい。