2025年9月場所個別評価 獅司

 今場所は東前頭18枚目だったが10勝5敗の好成績だった。黒星発進も前半戦は6勝2敗で折り返した。そして後半戦は12日目に勝ち越しを決めると14日目は大栄翔を叩き込み、幕内初の二桁勝利となった。

 内容に関しては右四つの相撲と押し相撲で白星を挙げていた。前半戦はここまで勝てなかった竜電と明生に勝ち、進境を見せた。また後半戦は好内容の相撲が多かった。11日目の佐田の海戦は当たってすぐに右を差されて寄り詰められたものの左へ回り込んで残した。そして佐田の海が前に出てきたところを左小手投げで裏返しにした。相手十分の形を許しており、褒められた内容ではないものの豪快な投げであり、スケールの大きさはやはり魅力がある。12日目の御嶽海戦は四つに組もうとするも御嶽海が右へ回り込むなどして嫌うと押し合いの攻防となった。動きが止まったがしばらくして右から押し上げると左からおっつけ、最後は御嶽海の上体を起こして押し出した。稽古量は十分であり、我慢ができるようになってきている。そして14日目の大栄翔戦は大栄翔の突き押しを凌ぐと左からいなして大栄翔を泳がせた。その後大栄翔に左からいなされて泳いだものの向き直ると右から叩いて這わせた。大栄翔は休場明けで本調子ではないものの実力者であることに変わりなく、今後への自信としたい。

 一方負けた相撲に関しては注文を付けたくなる内容もあった。4日目の湘南乃海戦は左に変わって叩くも決まらず、向き直った湘南乃海に右上手を取られると左も差され、寄り切られた。変化は悪くないが、右へ変わったのならせめて右上手は取りたかったところである。結果的に何をしたかったのか分からない相撲になってしまった。9日目の朝紅龍戦は押し合いから間隔が空いたところで右から強烈な張り手を入れた。しかし朝紅龍の動きを止められず、最後は投げの打ち合いに敗れた。張り手を入れるのであれば相手の動きを止めた上で先に攻めなければ意味がない。張り手の使い方を師匠から教わった方がいいかもしれない。また師匠からは「廻しを取って前に出ろ」と言われているようだが、細かな技量が備わっている力士ではない。よって単純に廻しを取って前に出る、差して前に出るで良さそうだ。あとは経験を重ねながらといったところである。

 来場所は東前頭11枚目となったが勝ち越しではなく二桁勝利を求めたい。引き続き廻しを取ることが課題となるが、相手が簡単に廻しを与える訳がないので、まずは押し相撲を磨きたい。そして押して前に出ながら廻しが取れれば理想的である。まだ眠っている才能もあり、その開花を期待したい。