2025年9月場所個別評価 竜電
今場所は東前頭17枚目であり再入幕となったが9勝6敗で勝ち越した。3連勝スタートを切ると前半戦は6勝2敗で折り返した。そして後半戦は10日目に勝ち越し、幕内では1年ぶりの勝ち越しとなった。しかしその後は番付上位の力士に当てられたこともあって星が伸びず、二桁には届かなかった。
内容に関しては四つに組み止める相撲と投げ技で白星を挙げていた。初日の日翔志戦は当たり勝った後突き起こし、一方的に押し出した。7日目の佐田の海戦は左を差された後下手を取られて出るのを両廻しを取ってこらえた。その後は投げの打ち合いとなったが右上手投げで佐田の海を裏返しにした。本人は取組後「すぐに投げにいかなくて、しっかり耐えて相手が伸び切ったところで投げることができた」とコメントしていた。投げるにしてもそのタイミングが大事ということだと思う。そして10日目は明生を送り出して勝ち越した。取組後は「(幕内では)ずっと負け越しが続いていて、周りの人にアドバイスを頂いて、それがすごく力になった。一番大きいのは玉鷲関の存在です」と語った。玉鷲は毎日のように出稽古に訪れ、鍛えてくれたようである。また竜電は下が高い上に的が大きいので玉鷲も稽古相手として重宝していると想像している。
好内容だったのは9日目の時疾風戦と12日目の正代戦である。時疾風戦は当たってすぐに相手得意の左四つ右上手を許した。その後寄り詰められた後上手投げを打たれたものの棒立ちになりながらこらえた。その後左を差し、右からのおっつけで上手を切り、体が離れた。そして右を差すと左も差し、モロ差しになって前に出て寄り切った。竜電らしい粘りのある相撲だった。正代戦は左前廻し狙いも振りほどかれ、その後右上手を取ったものの正代に引かれた際に切られた。それでも正代の動きに対応すると左をのぞかせ、右はおっつけながら上手を取り、寄り切った。このように離れて相撲が取れれば幕内でまだまだやれそうである。組み止めて力を発揮する力士というのは分かっているが、押し相撲の強化が今後のポイントになるかもしれない。
来場所は再度の勝ち越しを期待したい。年齢は34歳であり、来月で35歳となるがまだまだ体は動いている。そして稽古を積んできているので、あとは経験を生かした一工夫が大事になってきそうである。そういった意味でも玉鷲は良いお手本である。少なくとも長く相撲が取れる下地は整っており、あとはその下地を最大限に生かして欲しい。
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