2025年9月場所個別評価 友風

 今場所は東前頭16枚目であり、8場所ぶりの幕内での土俵となったが9勝6敗で勝ち越した。6日目までは5勝1敗と好調であり、前半戦は5勝3敗で折り返した。そして後半戦も白星を伸ばすと13日目は佐田の海を叩き込み、勝ち越しを決めた。

 内容に関しては押し相撲と叩く相撲で白星を挙げていた。3日目の翔猿戦は得意の押しからの叩きを翔猿が何度もこらえ、熱戦となった。そして粘り強く突き立てると引かれて這いながらも押し出した。物言いが付いたが軍配通りとなった。6日目の明生戦は明生のぶちかましをこらえると突き立て、土俵際まで押し込んだ。その後の叩きを明生がこらえると張り手を入れ、激しい突っ張り合いとなった。最後は右へ体を開いての叩きが決まった。取組後本人は「立ち合いから引かせにきている。引きたくてしょうがなかった。前に前にという気持ちが出た」とコメントした。明生は友風の叩きを頭に入れており、そのあたりを含めての攻防が非常に面白かった。それでも最後に叩いて決めるあたりは技に対するプライドかもしれない。

 11日目の宇良戦は宇良の当たりを受け止めると右へ動いて叩き込んだ。勿論押し込めているから叩きが決まるというのもあるが、友風は引き足が速く、真っすぐ下がるだけでなく、左右への動きも速い。よって同じ叩きであっても複数の引き出しを持っており、対戦相手にとっては厄介である。また宇良は互いに序二段から幕内に復帰したという点では同士であり、「宇良関の顔を見た時は心に来るものがあった」とコメントした。両者共に大怪我から番付を戻しており、心から尊敬できる。

 そして13日目は佐田の海を叩き込み、幕内では6年ぶりとなる勝ち越しとなった。初金星と殊勲賞を獲得した6年前の7月場所から2場所後の11月場所で右膝の大怪我を負った。4度の再建手術を受け、7場所連続休場後の2021年3月場所で序二段から復帰した。その後何度か心が折れたようだが、周囲の人に励まされながら頑張り、現在に至っている。よって幕内での勝ち越しは区切りとなったはずである。失礼ながら私的には今場所勝ち越すとは思っていなかった。しかし良い意味で裏切ってくれたという気持ちである。先場所も体が良く動いており、その流れを持ち込めたという感じがする。

 来場所は番付を上げるが、再度の勝ち越しを期待したい。それと同時に右膝を大怪我しているという事実は変わらず、結果以前に15日間無事に取り終えて欲しい。