2025年9月場所個別評価 高安

 今場所は7勝8敗という成績だった。6連敗スタートとなり、前半戦は2勝6敗で折り返した。そして後半戦は11日目は大の里に敗れ、負け越しが決まった。しかし翌日からは連勝すると千秋楽は霧島を破って7勝目を挙げ、三役残留に望みをつないだ。

 場所前の稽古総見と二所一門の連合稽古を欠席し、体調が良くなかったことが6連敗の原因である。そして動きも精彩を欠いており、大負けも予想された。しかし7日目に連敗を止めると8日目は琴櫻を下手投げで破り、見せ場を作った。その後は本来の動きが戻り、ベテラン健在を見せた。

 印象に残ったのが11日目の大の里戦と12日目の平戸海戦である。大の里戦は強烈なかち上げで大の里の上体を起こすと右に回り込む大の里を突き立てた。しかし大の里の左からの突きでバランスを崩すと押し返され、そのまま突き出された。凄かったのは立ち合いである。巨漢同士のかち上げは非常に見応えがあり、迫力があった。そして当たった瞬間から館内からは大歓声が上がっていた。最後は地力の差が出たものの、見せ場十分の内容だった。一方押し込まれた大の里は内容が不満だったのだろう。取組後は首をひねる仕草を見せていた。負けたとはいえ、伸び盛りと言える横綱相手にこれだけの相撲が取れるのは大したものである。

 平戸海戦は右差し左上手狙いだったが平戸海に突き起こされて果たせず、細かい突っ張りに切り替えた。その後土俵際まで押し込まれた後左に下がってのいなしをこらえると、逆に左へいなして平戸海のバランスを崩した。そして左のど輪を入れ、押し倒した。この日に限らず今場所は左からのいなしがよく決まっていた。押すと見せかけてのいなしであり、相手が動きに対応できていなかった。このあたりは力任せではなく経験に裏付けられた技術であり、ベテランにしか取れない相撲である。

 来場所はおそらく小結に止まれると思うが、本人の目指しているのはそこではない。目標は大関復帰と初優勝である。特に優勝に関しては現実的な目標であり、是非とも果たして欲しいところである。また来場所でなくても構わないので悲願達成を期待したい。そして悲願は関係者に限らず、相撲ファン全ての願いでもある。