2025年9月場所個別評価 大の里

 今場所は13勝2敗という成績で5回目の優勝を果たした。また横綱昇進後初優勝となった。3連勝スタートも4日目は伯桜鵬に突き落としで敗れ、初黒星となった。そして対伯桜鵬戦は連敗となり、2場所連続で金星を配給した。もう一人の横綱の豊昇龍が初日から白星を並べたので、その後は星一つ差で追う展開となった。その豊昇龍が12日目から連敗したので13日目終了時点で単独トップに立った。しかし千秋楽本割で豊昇龍に敗れて決定戦に持ち込まれた。決定戦では本来の相撲を取り戻し、豊昇龍を寄り倒して優勝を決めた。

 内容に関しては出足を生かした突き押しと右差しの相撲には安定感があった。普通は優勝した力士は危ない相撲が1番か2番あるものだが、それが1番もなかった。確かに危なくなりかけた相撲はある。2日目の玉鷲戦は右のど輪で上体を起こされかけたが左からの突き落としで退けた。8日目の平戸海戦は当たってすぐに左前廻しを取られ、右は差せなかった。しかし左おっつけから平戸海の上体を起こすと力強く押し出した。そして9日目の若元春戦は当たってすぐに右足が後ろに滑り、背中を見せてしまった。ヒヤッとしたがすぐに向き直ると右を差し、左はおっつけながら寄り詰め、体を預けた。いずれも危ない内容とまでは言えず、危なくなる前に対処できていたという印象である。

 そして感心したのが精神面である。おそらく自分の相撲に手ごたえを感じていたのだろう。9日目に1差のまま勝ち越しを決めても「追う展開なんで深く考え過ぎず、チャンスは転がってくるものだと思っている」と悠然と構えていた。その後豊昇龍が連敗したので単独先頭に立った。よって豊昇龍が負けるまで我慢して追いかけたことが優勝の要因だと私は思っている。もっとも気持ちよりも技術的な裏付けがあったからこそ追う展開でも自信を持って相撲が取れたということかもしれない。

 負けた相撲に関しては本割の豊昇龍戦は立ち合いで迷いがあったのかもしれない。その上前日は不戦勝ということで体が動かなかったことが原因と言えそうだ。よって気にするような黒星ではない。問題は伯桜鵬戦である。前に出ての負けなので内容的には悪くない。しかし連敗かつ2場所連続で金星を献上したのは事実である。苦手を作らないためにも対策が求められる。伯桜鵬は右を差させないというテーマを持って相撲に臨んだようだ。そして差し身が上手い力士である。無理して右を差そうとするよりも別の方法を考えた方がいいかもしれない。また右を差せなかった時の対処という点で課題が出た一番でもあった。

 来場所は連覇できるか注目である。今年は既に3回優勝しており、4回目となると大の里一強時代の到来と言っても過言ではない。弱点も少なくなってきており、対戦相手は大変である。ただここで満足してしまっては大横綱の道は歩めない。課題を一つ一つ克服し、更なる高みを目指して欲しい。