2022年3月場所個別評価 豊昇龍

 新小結だったが8勝7敗で勝ち越した。前半戦は上位力士との対戦が多かったが4勝4敗で折り返した。しかし後半戦は連敗し、13日目も敗れて7敗となり、勝ち越しに向けて後がなくなった。しかしここで諦めないのが豊昇龍である。14日目は遠藤に勝つと千秋楽は優勝の可能性を残していた琴ノ若を下手出し投げで破り、見事に勝ち越しを決めた。

 内容に関しては上位力士には歯が立たなかったと言っても過言ではない。照ノ富士戦は突き放しに行くもすぐに右を差され、寄り切られた。正代戦は立ち合いから右上手を取るも逆に左を深く差されて寄り切られた。そして貴景勝には土俵際の掬い投げで勝ったものの一気に押し込まれており、物言いもついている。内容的には負けており、勝負に勝ったというだけのことである。このように現状では勝ち越すのが精一杯といった内容であり、お世辞にも二桁勝利が期待できる内容とは言えない。

 課題はやはり立ち合いの当たりの強化である。5日目の若隆景戦は立ち合いから突き放され、最後は寄り切りで敗れたが、立ち合いの圧力の差がそのまま出た一番だった。厳しい言い方をすれば若隆景の圧力に対抗できない限り大関候補にはなれないということである。確かに技の引き出しが多く、相撲の上手さは認めなければいけない。しかしそれに頼っているようでは上は望めない。あとは叔父の元朝青龍が言うように三役に上がった以上、ここから先は本人次第なのかもしれない。

 また5月場所前の合同稽古では精力的に稽古をしていたようである。同部屋の明生が腰を痛めているのもあるのかもしれない。ぶつかり稽古も行っているようであり、自分なりに課題をもって取り組んでいるようだ。

 さて5月場所だが再度の勝ち越しといきたい。立ち合いに関してはすぐに改善できる部分ではないので少しずつ体重を増やしながら、そして稽古をしながらというところになってくると思う。22歳と年齢は若いので少し長い目で見たほうがいいのかもしれない。まだこれといった相撲の型もない。ある意味では叔父譲りの強くて柔らかい足腰だけで三役に上がったようなものである。逆を言えば伸びしろは他の若手力士以上にたくさんある。将来性という意味では非常に楽しみである。目先としては小結という地位に相応しい内容と結果を期待したい。