2025年9月場所を振り返って 優勝争い 14日目 若隆景ー豊昇龍戦

 そして結びの一番である。豊昇龍は若隆景戦だった。過去の幕内での対戦成績は豊昇龍の7勝6敗である。数字はほぼ五分だが、若隆景が勝ったのは豊昇龍が関脇までの頃である。豊昇龍が大関に昇進した後は豊昇龍が4連勝しており、分がいい相手である。また内容的にも豊昇龍のスピードに若隆景がついて行けておらず、普通に考えれば豊昇龍の方が有利である。ただ豊昇龍は連敗中であり、その部分がどう出るか?と見ていた。

 相撲は若隆景が低く当たったところを豊昇龍の右へ動いての叩き込みが決まった。頭から当たっておらず、明らかな注文相撲である。しかし豊昇龍は勝負に徹し、優勝決定は千秋楽に持ち越しとなった。

 豊昇龍は取組後は「今日は勝ちに行った」と語り、変化で決めに行ったのかとの問いに「はい」と認めた。横綱なので自ら勝つだけでなく、横綱としての責任や優勝争いの責任など、いろいろな責任がのしかかっており、変化した気持ちは分かる。見る方からすれば、若隆景の調子が良くないので普通に取っても勝てたのではないかという見方もあると思う。しかし本人的にはとにかく勝って優勝争いに持ち込みたいという強い意思表示であり、それが相撲になって表れたということである。勝って自らが優勝を決めるというシチュエーションでなかったことだけがせめてもの救いである。またこの日観に行ったお客様は残念だったと思う。大の里戦は不戦勝で見れず、豊昇龍は注文相撲での白星では八角理事長も「今日来たお客さんに申し訳ない」と謝罪のコメントをするしかなくなる。いずれにしても豊昇龍は批判覚悟で立ち合い変化をし、千秋楽の大一番へと持ち込んだ。

続く