2022年3月場所個別評価 阿炎
新関脇となったが8勝7敗で勝ち越した。前半戦は黒星スタートも6勝2敗で折り返した。しかし後半戦に入ると9日目から4連敗し、勝ち越しさえ怪しくなってきた。しかし13日目に連敗を止めると千秋楽は優勝争いのトップを走っていた高安を気迫の相撲で送り倒し、勝ち越しを決めた。
内容に関しては勝った8番のうち、前に出て勝った相撲は4番しかなく、自分の相撲が取れていなかった。本人は口にしていないが、原因は肘の痛みだと思われる。サポーターは施していたものの、左の方はまだ使えていた。しかし右はあてがっている程度であり、ほとんど使えていなかった。結局11日目からは右にもサポーターを施して土俵に上がっていた。やはり番付が上がり、重たい相手を押し続けていると肘に負担がかかる。同じく突き押し得意の大栄翔は右肘の遊離軟骨除去手術を受けた後に初優勝を果たしており、あまりにひどいようなら手術するのも手かもしれない。ただ今場所観た限りでは本来の相撲が取れていた内容もあり、日によって状態に波があったのかもしれない。
しかしそんな中で千秋楽の高安戦は立派だった。雰囲気に呑まれるような状況だったが自分の相撲を取ることに集中していた。立ち合いから左のど輪で相手を起こすと右おっつけで横を向かせ、そのまま送り倒した。おそらく今場所最後の相撲だったので渾身の相撲だったと思われる。また優勝争いをしている相手に勝てるというのは地力がある証拠である。勿論勝ち越して関脇の地位を守ったのも偉かった。確かに好成績ではなかったかもしれないが、調子が良くない中でも番付を維持したというのは私は評価したい。
5月場所は肘の状態が少し気になるが、二桁勝利を挙げ、大関昇進への起点を作りたい。やはり阿炎の場合は相手よりも自分の相撲が取れるかどうかに尽きる。手足の長さ、柔軟性、スピードとあらゆる要素を兼ね備えているので今の地位に満足するのではなく、更なる躍進を期待したい。
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