2022年3月場所を振り返って 優勝争い その1

 2022年3月場所は新関脇の若隆景が12勝3敗という成績で初優勝を果たした。高安との優勝決定戦を制した。新関脇での優勝は双葉山以来86年ぶり、そして福島県出身としては1972年1月場所の栃東以来50年ぶりとなった。それでは優勝争いを振り返っていきたい。

 前半戦は照ノ富士が6日目から休場。カド番の貴景勝が2日目から連敗。同じくカド番の正代が初日から4連敗するなど上位力士が役割を果たせなかった。そんな波乱ムードの中、元大関で平幕の高安が全勝で前半戦を折り返した。そして新大関の御嶽海、新関脇の若隆景、平幕の琴ノ若の3人が1敗で追いかける展開となった。高安は1年前は逆転優勝を許しており、実績を見ても優勝の可能性が出てきた。御嶽海は上位陣が振るわない中、何とか大関としての役割を果たしているといった印象。若隆景は成績は素晴らしいがここまでは小結以下との対戦しかなく、後半戦に白星を伸ばせるかがポイントである。そして琴ノ若はここまで役力士との対戦はないものの、平幕中位に番付を上げており、先場所も千秋楽まで優勝争いに絡んだ実績を踏まえると着実に力を付けているといった印象である。ここまでは高安が盤石の相撲を取っており、高安が優勝争いの中心といったムードが漂う中後半戦を迎えた。

 後半戦は9日目は全勝と1敗は変わらないものの、2敗力士がいなくなった。そして10日目は御嶽海が北勝富士に敗れて2敗に後退。高安は全勝を守ったので優勝に向けては少し苦しくなった。他の1敗力士はいずれも勝ち、1敗を守った。

 そして11日目。全勝の高安は1敗の若隆景との対戦となった。11日目だが優勝争いを大きく左右する取組となった。過去の対戦成績は若隆景が5勝2敗とリードしている。内容も高安が四つに組もうとするも若隆景に組ませてもらえず、動き回られて高安が苦戦するといった相撲が多い。しかし高安が勝ち、全勝を守れば優勝に向けて大きく前進するのは間違いない。両者はどう見ていたかは分からないが、私は非常に重要な一番だと見ていた。

 相撲は立ち合いは両者頭から当たり、押し合いとなった。そして高安の押しに若隆景の上体が起きそうになるも起きない。一方若隆景は高安の押しをこらえると右ハズから右を差すと左はおっつけながら差してモロ差しとなり、頭は高安のあごの下に入れて一気に寄り切った。若隆景は1敗を守ると同時に正攻法の相撲で勝ったという意味で自身が付いた一番だったと思う。一方高安は突っ張ってから四つに組む作戦だったが失敗に終わった。気持ちを切り替えて明日からの相撲に臨むしかない。これで1敗で2人が並んだわけだが、負けた高安は優勝を逃した去年の3月場所は終盤に3連敗しており、改めて精神面が問われることとなった。

 また琴ノ若は貴景勝に突き落としで敗れて2敗に後退。一方御嶽海は2敗を守り、1敗の2人を2敗で2人が追いかける展開となった。

続く