2025年5月場所個別評価 阿武剋

 今場所は自己最高位の東前頭8枚目だったが10勝5敗の好成績だった。連勝スタートも3日目からは黒星が増え、7日目終了時点では3勝4敗と黒星が先行した。しかし翌日からは連勝し、12日目に勝ち越しを決めた。その後千秋楽は明生に勝って2場所連続となる10勝目となった。

 内容に関しては右四つの相撲で白星を挙げていた。また先場所は個人的には負けた相撲に物足りなさを感じたが今場所は15日間通して相撲に安定感があった。ちょっとした隙を突かれるといった内容も解消されつつある。初日の美ノ海戦は美ノ海に左前廻しを取られた後、前廻しを切ったものの押し込まれた。しかし左に回り込んで残すと押し合いの攻防となった。最後は美ノ海の左肩透かしに乗じて押し出した。技を持っており、体が柔らかいので攻防に持ち込めば力を発揮するタイプである。14日目の嘉陽戦は嘉陽に一瞬モロ差しを許したもののすぐに右を巻き替え、左上手を取って引き付けて前に出て寄り切った。すぐに巻き替えたあたりは先場所と比べても成長している。そして千秋楽の明生戦は明生がぶちかましてから突き起こして左を深く差して寄り立てた。しかし左下手を取って凌ぐと明生の引きに乗じて寄り倒した。明生は速攻相撲で料理しようという意図が見え、長い相撲になると勝手が悪いと思ったのかもしれない。またそれは明生に限らず、他の力士も同じような認識かもしれない。

 来場所は番付を上げ、上位力士と対戦する位置となりそうだ。ポイントは上位力士の攻めを凌げるかどうかである。今の当たりでは正直言って凌げるとは思えない。ただ凌いで攻防のある展開に持ち込めば勝てる可能性はあると見ている。また今の上位力士に関しては柔らかさを持ち味としている力士は横綱と琴櫻を除けばこれといって見当たらない。よって長い相撲に持ち込めば左四つでも相撲が取れ、押し相撲も取れるなど技の引き出しが多いので付け入る隙はある。モンゴル出身なので大丈夫だとは思うが、自分の相撲に自信を持ち、堂々とぶつかって欲しい。