これぞ理想の横綱! 照ノ富士 相撲の取り口

 右四つ・寄りを得意としていた。また四つに組み止めて左上手を取り、胸を合わせるという正攻法の寄りだった。そして上手投げも得意としていた。一方立ち合いが甘く、廻しが取れない時は引っ張り込む癖があった。また押し相撲得意の力士は苦手としており、一気に押し込まれることもあった。四つに関しては右差しというよりも左上手を取って力を発揮するタイプだった。取れれば万全だが、取れなかった時は苦戦を強いられていた印象がある。基本的には慎重な取り口であり、相手十分の体勢を許しておきながら腰の重さで凌ぎ、そのうちに自分の体勢に相手を誘導する技術も持っていた。よって四つ相撲得意のタイプは苦しめられてきたはずである。

 そして引っ張り込んで極める相撲も得意としていた。引っ張り込む相撲は高校時代から得意としており、大怪我をする前までは多用していた記憶がある。そして復帰後は見られなくなったが、横綱昇進後しばらくしてから再度極める相撲が増えた感じがする。極める相撲に関してはまた後ほど触れたい。

 復帰後は腰を低くして前傾姿勢を保ち、前廻しを取る相撲が増えた。印象に残っているのが2020年7月場所千秋楽の御嶽海戦である。優勝が懸かった一番だったが、勝って二度目の幕内優勝を果たした。素晴らしかったのがその内容である。当たってすぐに左上手を取り、御嶽海の動きを止めた。そして右は御嶽海の左差しをおっつけながら前廻しを取ると一気に寄り切った。現在は解説者の琴風さんが語っていたが、現役時代は当時横綱だった千代の富士に何度もやられた前廻しの取り方のようである。強烈な右からの絞りであり、絞られた方はその痛みで何もできなくなると語っていた。また番付を下げる前までは見られなかった取り口であり、成長の跡が見られた一番だった。

続く