2025年3月場所個別評価 栃大海

 今場所は西十両3枚目だったが9勝6敗という成績だった。3連勝スタートを切り、前半戦は5勝3敗で折り返した。しかし後半戦は9日目から3連敗し、黒星先行となった。その後終盤は連勝し、14日目は若ノ勝を叩き込んで勝ち越しを決めた。そして千秋楽も志摩ノ海に勝ち、9勝目ということで来場所の新入幕の可能性が出てきた。

 内容に関しては突き押しと叩く相撲で白星を挙げていた。場所前は部屋付きの元関脇・栃煌山の清見潟親方の胸を借りてパワーアップしたようである。身長193センチの長身であり、押せないとどうしても引いてしまうというのは仕方がない部分もある。よって引くのが悪いのではなく、突き押しを磨くことが強くなる一番の近道である。幕下時代は伸び悩んでいたがこれで4場所連続勝ち越しであり、本格化してきた感がある。

 印象に残ったのが2日目の欧勝海戦と8日目の輝戦である。欧勝海戦はもろ手突きを見せるも下からあてがわれて押し込まれた。しかし素早く体を開くと欧勝海はスピードについて行けず、そのままの勢いで土俵を割った。このスピードの速さが魅力の一つである。その一方でもろ手が通用しなかったのも事実であり、まだまだ稽古が必要である。輝戦は激しい押し合いの攻防となった。最後は栃大海が張り手を入れ、輝が土俵際まで押し込んだところを体を開いて叩き込んだ。軍配は輝に上がったが軍配差し違いで栃大海の勝ちとなった。阿炎などにも言えるが、土俵際でもつれるとやはり背が高く、手足が長い力士の方が有利に働くことが多い。俵の上で左かかとを浮かせており、勝負への執念を見せた。また長身力士同士の押し合いの攻防は非常に迫力があった。

 来場所は新入幕が有力視されるが、結果よりもまずは突き押しがどれ位通用するか試して欲しい。また十両力士より体の大きな力士が増えるので遠慮なくぶつかれるはずである。そして豊昇龍、王鵬、琴勝峰と同学年であり、遅れてきた大物でもある。まだ底を見せておらず、更なる成長を期待したい。