2025年3月場所個別評価 安青錦
今場所は東前頭15枚目で新入幕の場所だったが11勝4敗の好成績で敢闘賞を受賞した。初土俵から所要10場所での三賞受賞は年6場所制となった1958年以降では尊富士と並び最速である(付け出しを除く)。
連敗スタートとなり、序盤は2勝3敗だった。しかし6日目からは連勝し、11日目に勝ち越しを決めた。そして千秋楽は新入幕では5人目となる三役揃い踏みとなった。直後の相撲で王鵬を切り返しで破り、11勝で場所を終えた。
さて安青錦を紹介したい。安青錦はウクライナ・ヴィン二ツァ州出身で安治川部屋所属であり、年齢は21歳である。また身長182センチ、体重136キロであり、押し・右四つ・寄りを得意としている。2022年2月にロシアのウクライナ侵攻が始まったため、戦火を逃れて同年4月に来日した。その後同年12月に安治川部屋の研修生となり、2023年9月場所で初土俵を踏んだ。
内容に関しては頭を付け、懐に入る相撲で白星を挙げていた。4日目は大関経験者の御嶽海を低い姿勢から右のど輪で押し上げ、左前廻しを探りながら押し出した。6日目は幕内初のウクライナ対決で獅司戦だったが懐に入り左上手投げから左切り返しで崩して押し倒した。切り返しは三代目若乃花の取り口に似ており、流れるような攻めは見事だった。
そして終盤の相撲である。番付上位の力士との対戦が続いたが、新入幕力士は大抵は負けるものである。しかし11日目からは4勝1敗と逆に白星を伸ばした。13日目は大栄翔に負けたものの、これは仕方がない。14日目の尊富士戦は尊富士の出足を止め、相手の引きに乗じて左を差し、右からおっつけて寄り切った。取組後は解説だった尊富士の師匠の伊勢ヶ浜親方が弟子が引いたことに思わず怒っていた。裏を返せば安青錦が素晴らしい相撲を取ったということである。王鵬戦は突き立てられたが下からあてがい、引きに乗じて左を差した。その後頭を低くして右からおっつけて寄り詰め、右前廻しを取ると同時に左切り返しが鮮やかに決まった。懐に入るスピードと背筋の強さを見せた。結果だけではなく堂々とした内容での白星であり、他の上位力士に対するアピールにもなったと思われる。
来場所は平幕の真ん中あたりに番付を上げそうだが再度の二桁勝利を期待したい。課題はやはり増量である。今のままの体重では厳しいので稽古と食事で少しずつ増やしたい。下から攻めるだけでなくしぶとさも持っており、現在上位力士にこういったタイプは見当たらない。よって千秋楽の王鵬のように上位力士も苦労しそうである。また能力的にも平幕中位は通過点かもしれない。よって平幕上位の番付に上が雅ってからが勝負であり、上位力士との対戦を見据えて稽古を積み重ねていきたい。
最近のコメント