2025年1月場所個別評価 伯桜鵬

 今場所は東前頭15枚目であり、新入幕で優勝を争った2023年7月場所以来、9場所ぶりに幕内力士として土俵に上がったが10勝5敗の好成績だった。3連勝スタートも4日目からは3連敗し、前半戦は5勝3敗で折り返した。そして後半戦は13日目に平戸海を寄り切りで破り、勝ち越しを決めた。終盤も星を伸ばし、千秋楽は高安を破って二桁勝利で場所を終えた。

 内容に関しては当たって前に出てから左四つに組む相撲が多かった。11日目の翔猿戦は押し合いから翔猿に二本差されたものの寄りをこらえ、左上手を取って翔猿の動きを止めた。また左上手は1枚であり、甲を内側にした変則的な形となった。前に出られない一方、翔猿に何もさせないという点で効果的だった。最後は翔猿の左からの突き落としに乗じて寄り、右からの掬い投げで転がした。焦らずじっくり時間をかけ、うるさい相手を料理した。高安戦は立ち合いからの差し手争いに負け、右を差された上に左上手も取られて寄り立てられた。しかし右に回り込んで残すとあおって左上手を切り、左もこじ入れてもろ差しとなった。そして高安の左巻き替えに乗じて一気に寄り切った。不利な体勢からすぐに有利な体勢に持っていけるあたりは流石の相撲センスである。

 さて本人にとっては区切りとなる幕内での勝ち越しとなった。肩の手術に加えて伊勢ヶ浜部屋への転籍もあった。本人に非はないものの、肩身が狭くなり、大変な思いをしてきたはずである。それでも転籍がなければ今の伯桜鵬はないと私は見ている。これまで以上に前に出る意識が強くなった。また転籍したことで横綱に限らず熱海富士、宝富士といった四つ相撲得意の力士を目の当たりにし、四つ相撲だけでは通用しないと自覚できた。そして押して前に出る相撲に磨きをかけるようになった。勿論途中で四つに組むことが多いのだが、押す意識が押す意識があるのとないのとでは全然違う。また身長181センチ、体重155キロであり、幕内に入ると体が大き方とは言えない。よって今後も押し相撲に磨きをかけることが不可欠だと考えている。加えて伊勢ヶ浜部屋で揉まれてきた経験が今後必ず生きてくるはずである。

 来場所は番付を上げるが再度の勝ち越し、そして二桁勝利を期待したい。相撲センスがある一方、時に馬力負けする内容も見られる。よって本場所の結果だけでなく、稽古場で押し相撲の強化と馬力強化に力を注ぎたい。