2021年7月場所を振り返って 優勝争いなど その3

 千秋楽の全勝対決は最後の仕切りでは立ったまま10秒以上にらみ合い、そして腰を下ろしてからも10秒以上にらみ合う異例と言える仕切りとなった。その後照ノ富士が両手を付き、白鵬が応じる形で立ったが照ノ富士は左前廻しを狙いに行った。一方白鵬は左手を出した後にカチ上げという名のエルボーをかました。その後攻防の中で体が離れると今度は白鵬が左に右に大振りの張り手を繰り出した。そして照ノ富士も応戦し、照ノ富士の脇が開いたところを右四つに組み止めた。しかし組み止めたところで照ノ富士を寄り切れるだけの力はもうない。結局照ノ富士が左からおっつけてきたところを体を離しながら上手投げを打ち、上手が切れたところで両腕で照ノ富士の右腕を抱え、最後は小手投げで沈めた。白鵬は右手でガッツポーズをすると鬼の形相になった。白鵬からすれば手段を選ばず、何としても勝ちたかったというのが良く伝わった一番だった。

 しかし観ている方からすれば全勝対決がカチ上げあり、張り手ありの荒っぽい相撲になってしまったのは気持ちのいいものではない。個人的には白鵬は照ノ富士の力量を認めた上で、弱者の戦いで臨み、勝ちに行ったと思っている。ただ協会幹部や相撲ファンは正々堂々の真っ向勝負を望んでおり、その部分では期待を裏切ったと言われても仕方がない。また白鵬の7場所ぶりの優勝という結果は凄いと思うが、残念ながら人々の記憶に残らない優勝となってしまった。照ノ富士は白鵬の張り手の挑発に乗ってしまったのが全てだったが悲観することはない。14連勝した内容は文句のつけようがなく、気持ちを切り替えて新横綱として9月場所に臨んでほしい。

 三賞は正代を破り、10勝を挙げた豊昇龍が技能賞を、そして12勝をマークした琴ノ若が敢闘賞を受賞した。いずれも初となる三賞受賞である。また前途有望な若手力士であり、今後期待したい。十両は水戸龍が12勝3敗という成績で初優勝を果たした。来場所の新入幕が濃厚である。

終わり