2021年5月場所を振り返って 優勝争い その4

 そして盛り上がって迎えた千秋楽。特にこれより三役からの三番は見応えがあった。

 高安と隆の勝の関脇対決は優勝争いには関係ないが高安は勝てば11勝となり、来場所の大関獲りに弾みがつく。その意味で高安にとって大事な一番だった。相撲は高安が突き起こすも隆の勝がこらえて額を付け合った状態で止まった。その後隆の勝が押し、高安が押し返したところを左に回り込んでかわし、叩き込んで這わせた。隆の勝は5勝10敗という成績であり、来場所は4場所守った関脇の座を明け渡すことになる。それでも千秋楽は意地を見せた。一方高安は今場所も10勝に終わり、7月場所は大関獲りではあるものの、13勝以上の成績が求められる。高安のキャリアハイが12勝であり、7月場所後の大関昇進は厳しくなったと言っていいと思う。痛い黒星ではあるが、復調してきているのは明らかであり、来場所に期待したいところだ。

 正代と遠藤の対戦は遠藤は勝てば優勝決定戦進出の望みがつながる一番である。相撲は遠藤が二本差して一気に寄るも正代は右小手投げで振り、体が離れたところを逆に左ハズで力強く起こし、体を入れ替えて押し出した。遠藤はこれで優勝の可能性が消えたが自分の相撲は取っており、負けて悔いなしといったところか。それよりも土俵下で見つめていた照ノ富士は優勝決定巴戦の可能性がなくなったのでホッとしたのではないかと思う。巴戦は二番続けて勝つまで終わらないので両ひざに爆弾を抱えている照ノ富士にとっては酷である。一方正代は14日目は照ノ富士は遠藤戦が組まれたので照ノ富士との大関対決がなくなった。そして先述の通り照ノ富士と遠藤の取組は熱戦だったが、正代が悔しかったのは言うまでもない。隆の勝同様、大関としての意地を見せた一番だった。本人が言うように来場所は優勝争いに絡む活躍を期待したい。

続く