2024年9月場所個別評価 錦木

 今場所は西前頭13枚目だったが11勝4敗の好成績で初の敢闘賞を受賞した。また2度目の三賞受賞となった。黒星スタートも2日目からは白星を増やし、前半戦は6勝2敗で折り返した。そして後半戦は10日目に勝ち越しを決めると11日目は若隆景との2敗対決を制し、優勝争いのトップを走る大の里を星2つ差で追走した。12日目は大栄翔に敗れて3敗となり、優勝争いから後退した。しかし14日目は王鵬を寄り倒しで破り、幕内自己ベストとなる11勝目を挙げた。

 内容に関しては出足が戻り、馬力を前面に押し出しての一気に前に出る相撲で白星を挙げていた。小結だった3月場所から3場所連続で二桁黒星となり、不調に陥っていた。そして夏場に周囲から「上半身に力が入りすぎている」との指摘を受け、股関節など体幹を意識した動きに特化したようだ。その結果上半身と下半身のバランスが良くなり、出足もスムーズになった。腕力が強く、腕力で相手の動きを止める相撲でもあるのでバランスを取るのが難しいのかもしれない。しかし今場所は体の動きがスムーズであり、場所を通して自分の相撲が取れていた。星数だけでなく、内容的にも三賞受賞は当然の結果である。

 特に素晴らしかったのは11日目の若隆景戦と14日目の王鵬戦である。若隆景戦は当たってすぐに右四つとなり、下手を取り合う体勢となった。その後若隆景が左を巻き替えて両差しになろうとするも錦木もすかさず左を巻き替え、今度は若隆景が頭を付ける体勢になった。若隆景は左下手を取っており、若隆景の方が有利な体勢に見えた。しかし錦木は右で若隆景の左を極めており、ロックする形となった。たまらず若隆景が左下手を離したところを右から抱え込み、右前廻しを取って若隆景が前に出てきたところを両手で抱えて小手に振り、ねじ伏せた。錦木は攻防のある相撲が取れるタイプではなく、今場所の好調ぶりを象徴する一番だった。王鵬戦は立ち合いで珍しく右からかち上げると左を差し、右は抱え込む形で一気に寄り倒した。かち上げは別にして、これが錦木の相撲である。何より足が出ていたのが調子の良さを物語っている。

 11月場所は平幕中位に番付を戻すが、今場所は平戸海を破っており、今場所のような相撲が取れれば二桁勝利は十分狙える。前半戦を白星先行で折り返し、後半戦で上位力士と対戦できるような流れを作りたい。34歳のベテランだが前に出る相撲が取れればまだまだ頑張れるはずである。まずは三役復帰を目標にして白星を重ねたい。