2024年7月場所個別評価 若隆景
今場所は東前頭14枚目であり、1年ぶりの幕内復帰となったが11勝4敗の好成績だった。また千秋楽に勝てばという条件付きで技能賞候補に挙がったが8票であり、過半数の11票に届かず落選した。元大関候補の実力者であり、平幕下位での大勝ちは当然という見方かもしれない。
内容に関しては立ち合いから右を差す相撲とおっつける相撲で白星を挙げていた。やはりこの番付では力が違った。立ち合いでしっかり当たれているだけでなく、二の矢の攻めも光った。その一方で負けた4番に関してはいずれも膝の痛みが原因と言って良さそうだ。また負けた相撲だけでなく、勝った後も右膝を痛がる素振りを見せており、膝が完全に復調した訳ではない。
勝った相撲に関してはいずれも好内容だったが、特に良かったのが10日目の翠富士戦と13日目の平戸海戦である。翠富士戦は当たって押し込むも翠富士に右を差された後押し込まれた。しかし土俵際で際どく左に回り込むと翠富士の背中につき、向き直ったところを押し出した。改めて復活をアピールした内容だった。ただ膝への負担を考えると翠富士戦のような動く相撲は私としては取って欲しくない。怪我を再発する可能性もあり、低い攻めを意識したい。平戸海戦は当たってすぐに右を差し、平戸海の引きに乗じて一気に押し出した。勢いのある新三役相手に何もさせなかった。またこの日は久しぶりの幕内後半戦の土俵であり、気合が入ったみたいだが、いかにも若隆景らしいコメントである。
9月場所は東前頭7枚目となった。再度の二桁勝利を期待したいが、私が観た限りでは体の動きが戻ってきた一方、右膝の状態は良化途上のように見える。また膝が完治するにはもう少し時間がかかりそうである。よって本場所の相撲は勿論だが、稽古場でも番数を制限するなど、無理はしてほしくないところだ。少なくともあと1場所は目先の白星にこだわるのではなく、慣らし運転のつもりで臨んで欲しい。平幕上位に上がるであろう11月場所で完調な状態に戻るのが理想である。実力があるのは分かっており、今はライバルを気にするよりも自分の体と向き合いたい。怪我をする前とは相撲の取り口が変わってきており、今後に向けて期待が持てそうだ。