2024年5月場所個別評価 熱海富士

 今場所は東前頭筆頭だったが7勝8敗で負け越した。初日は豊昇龍、3日目は霧島を破るなど序盤は二大関を倒す活躍を見せた。しかし4日目からは連敗し、前半戦は2勝6敗で折り返した。そして後半戦は巻き返すも11日目は高安に敗れて7敗目となり、勝ち越しに向けて後がなくなった。その後は3連勝し、7勝7敗で千秋楽を迎えた。しかし隆の勝に寄り切りで敗れ、三役昇進はお預けとなった。

 内容に関しては右四つの相撲と押し相撲で白星を挙げていた。やはり二大関を破った相撲が光った。豊昇龍戦は立ち合いからすぐに左前廻しを取り、相手の下手投げを警戒しながら寄って行き、下手投げで仕留めた。霧島戦は霧島の不調はあったものの、一方的な内容で押し倒した。体が大きくなっている上に張りもあり、上位力士が相手でも見劣りしなくなってきている。

 しかし前半戦は5連敗しているように、地力が付いてきているとまでは言えない。あっさりした内容で負けることも多く、もう少し相撲に粘りが欲しいところだ。また6日目の豪ノ山戦と7日目の大の里戦はいずれも得意の形に持ち込みながら負けており、不満が残る。豪ノ山戦は得意の右四つに組み止めた。しかし豪ノ山に左を差され、懐に入られると熱海富士が右を巻き替えたところで左から突き落とされた。左を差されたことが敗因であり、右からの攻めに課題を残した。大の里戦は大の里の出足を止め、左上手を取り、頭を付けたところまでは良かった。しかし寄り立てたところで大の里の右下手出し投げに反応できず、転がされた。確かに大の里が右下手一本でよく勝ったという内容である。しかし結果論だが右はおっつけではなく、廻しを取っていればまた違った展開になっていたかもしれない。いずれにせよ自分有利の体勢に持ち込みながら勝てないようでは三役昇進がおぼつかないのは確かである。

 7月場所は三役昇進に向けて仕切り直しとなるが、今度こそ三役昇進といきたい。既に三役に上がれる力は持っており、あとは結果を出すだけである。繰り返しになってしまうが、課題は得意な形を作った後の攻めである。リーチは長くなく、敢えて押し相撲に切り替えるというのも一つの手かもしれない。地力を付けると同時に考えながら相撲を取ることが求められる。