2023年9月場所を振り返って 優勝争い その3

 11日目。熱海富士は翔猿戦、高安は大栄翔戦が組まれた。熱海富士は初めての役力士との対戦となった。相撲は翔猿は小兵力士だが役力士としてのプライドがあり、いつもは立ち合いで何をしてくるか分からないが、真っすぐ当たり、熱海富士の立ち合いを正面から受けた。すると熱海富士は右を差すと同時に左上手を取ると上手投げで翔猿を裏返しにした。柔道で言えば一本である。投げられた翔猿は土俵上で苦笑いを浮かべていた。しかしいくら小兵とはいえ、三役力士相手に力を見せつけたのは事実である。結果だけでなく、インパクトも十分だった。

 高安と大栄翔の取組は立ち合いで当たって大栄翔が右へいなし、のど輪を入れると高安は防戦一方となり、そのまま押し出された。これで高安は連敗となり、3敗となったことで優勝争いから一歩後退した。内容的にも高安は精一杯取っていると思うが、大栄翔は関脇であると同時に大関候補でもある。番付の差がそのまま相撲内容となって表れた一番だった。

 11日目終了時点で1敗は熱海富士。そして2敗はおらず、3敗で貴景勝、高安、剣翔の三人が追いかける展開となった。残り4日だが、熱海富士が星二つ差でリードしたのは事実であり、初優勝の可能性が出てきた。そして注目は取組である。協会審判部が熱海富士に誰をぶつけるかというのも楽しみになってきた。何より熱海富士は前途有望な若手期待の力士である。優勝争いとともに熱海富士がどういった内容の相撲を取るかが非常に興味深い。その一方で役力士も当然意地を見せたいところである。まさかの展開で終盤戦に突入した。

続く