2023年7月場所を振り返って 優勝争い その6
14日目。2敗の北勝富士は3敗の伯桜鵬との取組となった。また3敗の錦木は竜電と、豊昇龍は若元春との割が組まれた。北勝富士が勝ち、錦木と豊昇龍が敗れれば千秋楽を待たずして北勝富士の優勝が決まる。
伯桜鵬と北勝富士の一番は伯桜鵬が新入幕、そして北勝富士が平幕中位の番付ということで前半戦の取組となった。相撲は立ち合いからお互いに左四つに組み、上手は取れないという形になった。その後は北勝富士が右上手を取りに行こうとするも伯桜鵬がそれを許さない。一方伯桜鵬は右上手を取りに行かず、北勝富士の出方をうかがっていた。そして北勝富士が小手投げを打つなど揺さぶる中で伯桜鵬の左下手が切れ、体が離れた。その瞬間を待っていたかのように北勝富士が右ハズ押しで伯桜鵬を土俵際まで押し込んだ。しかし伯桜鵬は土俵際で右から突き落としを見せ、体を開くと北勝富士はたまらず土俵を転がった。物言いが付いたものの、伯桜鵬の足は残っており、軍配通り伯桜鵬の勝ちとなった。これで両者ともに3敗となり、優勝争いがますます混とんとしてきた。
私はこの一番が今場所の優勝の行方を大きく左右したと思っている。勿論伯桜鵬が勝ち、優勝の可能性が出てきたというのは非常に大きい。しかし北勝富士の側に立てば今日仮に勝っていれば明日自力で優勝することもでき、14日目に優勝が決まる可能性もあった。初優勝を目指す北勝富士にとっては痛い星を落としたのは間違いない。優勝するのであれば何が何でも勝っておきたかったところだ。しかし伯桜鵬が結果としてそれを許さなかった。やはりポイントは立ち合いだった。北勝富士は組みに行かず、頭から当たって押す形だったが伯桜鵬の立ち合いのスピードに吸い込まれるような形で四つに組んでしまった。北勝富士は押し相撲を取る中で四つに組むことは時々あるが、元が押し相撲の力士なので最初から四つに組むと勝手が悪くなる。最後は体が離れたものの、結果的には終始伯桜鵬がペースを握っていたように見えた。物言いが付いた一番だったが、その意味で北勝富士は完敗だったと思う。しかしこれは伯桜鵬を褒めるしかない。
一方の伯桜鵬は北勝富士と違って上手は取りに行っておらず、北勝富士の攻めに対応していた。若手力士にありがちな自分有利な体勢に持って行きたいという姿勢はみじんも感じられない。そして体が離れ、押されても本人にとっては想定の範囲内の動きといった感じであり、左肩を常に意識させておいての右からの突き落としは北勝富士にとっては想定外だったと思う。初土俵の時からこういった相撲は時々見せており、やはり相撲センスの塊である。誰にでも取れるような相撲ではない。内容的には伯桜鵬の凄さが際立った一番だった。
続く
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