2020年9月場所個別評価 正代
9月場所は13勝2敗の好成績で初優勝を果たすとともに殊勲賞と敢闘賞を受賞した。そして場所後の番付編成会議と臨時理事会で大関昇進が満場一致で承認された。3連勝スタートも4日目は照ノ富士に敗れて初黒星。そして7日目は隠岐の海に突き落としで敗れて2敗となった。前半戦は6勝2敗で折り返し、後半戦に注目が集まったが白星を並べた。そして13日目は貴景勝、14日目は朝乃山に勝ち、優勝争いで単独トップに立った。千秋楽は新入幕の翔猿が相手だったが攻め込まれるも最後は突き落としで破り、優勝を決めた。
相撲内容に関しては負けた相撲は照ノ富士戦は立ち合いで押し込まれたので流れが悪くなった。攻防の中で右を差すも左からおっつけられ、そのまま押し出された。隠岐の海戦は立ち合いで差し負け、前に出たところを突き落とされた。差し手争いに負けたのが敗因である。ただ正代はこういった相撲でも白星を拾うことがあるので何とも言えない部分はある。そして勝った相撲に関しては全般に前に出るスピードと圧力が増したのが大きい。守勢に回らず、相手を押し込む内容が増えた。そして右を差し、左ははず押し、つまり相手の脇に手を入れて押す相撲が多かった。正代は右四つ得意の力士だが左上手を取ってもリーチが長くないので相手を呼び込む形となり、負ける相撲もある。それを考えると左で押したほうがやはりベターだと思う。しかしこの相撲だと廻しは取れないので前に出る圧力とスピードが前提条件になってくる。また廻しを取らないと相撲に安定感が生まれにくい。そして相手に逆転の余地を与えてしまう。その部分は体の柔らかさを生かして勝ったり負けたりというのが正代の相撲ではあるのだが。
11月場所は新大関として場所を迎えるが私は正代は横綱を目指せる大関とは思っていない。理由は2つある。1つは年齢、もう1つは相撲の取り口である。前者に関しては正代は現在28歳であり、11月には29歳となる。他の2大関より年齢が高い。また今がピークという可能性もあると私は見ている。後者に関しては正代にはまだ絶対的な型がない。八角理事長が指摘していたように上を目指すのであれば絶対的な型が求められる。大関でいえば朝乃山は右四つ左上手。そして貴景勝は独特の突き押し相撲があり、年齢的にも上を目指せると思っている。しかし個人的には型以前に大関としての役割を果たしてほしい。つまり大関としてコンスタントに2桁勝利を挙げる。そして前半戦はできるだけ取りこぼしはしないということである。上ばかりを見て足元を掬われてはどうしようもない。ただ11月場所は東京で開催されるので熊本県出身の正代は地元に帰る必要はない。残念だとは思うが付き合いに参加する必要はなく、時節柄相撲に専念できる環境である。それを追い風に活躍を期待したい。
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