2025年11月場所個別評価 美ノ海

 今場所は東前頭7枚目だったが8勝7敗で勝ち越した。前半戦は4勝4敗で折り返した。そして後半戦は13日目で7敗となり、勝ち越しに向けて後がなくなった。しかし残り2日は連勝して勝ち越しとなった。

 内容に関しては得意の左前廻しが取れず、相撲の上手さと対応力で白星を挙げていた。また自分の相撲が取れない中で勝ち越したというのはそれだけ地力が付いてきている証拠だと見ている。そして30歳で新入幕となってから2年が経った。その間に十両落ちはなく、今年3月場所は沖縄県勢としては初三賞となる敢闘賞を受賞した。体が大きくない中で幕内に定着しているのは立派である。

 好内容だったのは初日の阿武剋戦と千秋楽の竜電戦である。阿武剋戦は押し合いから左下手を取ると左ヒジを張って阿武剋の右上手を切った。その後頭を付けると下手出し投げで崩して寄り切った。左廻しを取ってからの流れるような攻めは見事だった。竜電戦は当たってすぐに竜電に右上手を取られたものの、ほぼ同時に左下手を取った。その後腰を落として頭を付け、左ヒジを張って竜電の右上手を切った。すると左からの下手ひねりで鮮やかに転がした。竜電は上手を取ると力を発揮するが、廻しを切る技量を持っており、阿武剋戦と同じである。また「千秋楽くらい、懸賞の一本くらいは欲しかった」とぼやいていたようだ。今場所は熊本県出身の義ノ富士に多くの懸賞が懸かっていたようだが、私的には一本くらい分けてあげて欲しいくらいの好内容だった。

 来場所は再度の勝ち越しを期待したい。左前廻しを取ると力を発揮するのは対戦相手も分かっている。その意味では押し相撲も磨いていきたい。相撲の上手さが目立つがよく見ると正攻法かつ逃げない相撲を取っている。そして自分の相撲に徹しているのが分かる力士であり、好感が持てる。来年は平幕上位定着、そして三役昇進といきたいところだ。