2025年9月場所個別評価 若隆景

 今場所は大関獲りの場所となったが6勝9敗という成績に終わった。黒星スタートとなり、3日目は玉鷲に敗れて早くも2敗となり、序盤は苦しい出だしとなった。その後は巻き返して前半戦は5勝3敗で折り返した。星勘定的には厳しいものの、大関昇進に望みをつなげる形で前半を終えた。しかし後半戦は9日目から3連敗して6敗となり、場所後の大関昇進が厳しくなった。翌日は連敗を止めるも終盤は3連敗して9敗に終わり、来場所は平幕からの出直しが濃厚となった。

 内容に関しては前半は体が動いていなかったものの、5勝3敗での折り返しは想定の範囲内だった。元々がスロースターターであり、後半に調子を上げられるかがポイントになると見ていた。しかし翌日からは連敗ということで調子を上げられず、逆に相撲が崩れてしまった。力尽きたという印象もあり、残念な結果に終わった。

 分岐点はやはり9日目の霧島戦だったと思っている。過去の幕内での対戦成績は8勝8敗の五分であり、直近は3連勝しているものの、激しい攻防があるのでどちらに転んでもおかしくないといった内容が続いていた。相撲は若隆景が左上手を取り、右四つに組み止めた。しかし霧島もここで簡単に負けてしまうような力士ではない。若隆景に右下手を切られると右を抜いて抱え、左を巻き替えた。そして若隆景が右上手を取って前に出たものの左から掬われて土俵下に転落した。接戦を制したのは霧島だった。若隆景にとって霧島戦は乗り越えなければならない関門だったが超えられなかった。また勝っていればこの後の流れが変わっていた可能性もあり、個人的には痛すぎる1敗だったという考えである。

 またもう一番取り上げたいのが7日目の安青錦戦である。相撲は低く踏み込んで右差しを狙ったものの安青錦に左からおっつけられ、差せなかった。その後突き起こされたところを引いてしまい、引きに乗じて押し出された。完敗という内容であり、対安青錦戦は連敗となった。そして安青錦は今場所は新三役で11勝を挙げ、大関候補に名乗りを上げた。21歳の新鋭ということで大関候補交代を感じさせるような一番となった。

 私としては厳しい言い方になってしまうが、大関獲りに関しては答えが出たような気がする。また先場所の10勝も千秋楽に勝っての二桁勝利であり、ギリギリでの大関獲りという見方もできる。むしろ大栄翔のように大関獲りを引っ張らず、負け越したのはかえって良かったのかもしれない。気持ちを切り替え、また一から頑張って欲しい。

 来場所は平幕陥落となりそうだが、大勝ちしての三役復帰を期待したい。三役復帰と三役での二桁勝利は可能なはずである。また大関獲りというプレッシャーはなくなったので、下からの相撲を取ることに集中したい。